時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

技術革新への過信は危険:リスクの高い投資

 本日の日経新聞の一面に地球温暖化問題と関連して、菅首相が日本企業の保有する預金の240兆円のすべてをクリーンエネルギー関連の投資に向かわせる意向であるとする記事が掲載されておりました。その投資は、2050年までに「二酸化炭素排出量ゼロ」を実現させるためのあらゆる技術開発事業に向けられると推測することができるのですが、果たして「二酸化炭素排出量ゼロ」を達成させるための技術は、開発され得るのでしょうか。

 

 1968年に、アーサー・クラーク氏は『2001年宇宙の旅』というSF小説を書き、凡そ30年後の人類は、飛行機にでも乗る感覚で、空の旅ならぬ宇宙の旅を楽しめるようになると予測し、多くの読者もまた、同じような予測を持ちました。

 

 そして、宇宙空間に向かう手段として、飛行機型をしたスペースシャトルという乗り物が開発され、宇宙の旅の時代が現実のものとなるという予測を後押しいたしました。しかしながら、そのつかのまに、チャレンジャー号の悲劇が起こり、この事故を契機にスペースシャトル計画は、とん挫いたしました。このことは、人類は、技術開発に成功するとは限らないことを示しております。

 

 では、2050年までのわずか30年間で「二酸化炭素排出量ゼロ」を実現させる技術は、開発されえるのでしょうか。

 

 以前にも本ブログで述べましたように、政府は、すべての家庭用機器(自動車・冷暖房機器・コンロ・お風呂など)を電化製品とすることを義務付け、電化製品以外の製品の製造・販売を禁止する意向であると伝わっておりますように、政府の基本路線は、オール電化であるようです。オール電化の前提条件として、安定的で廉価なクリーン・エネルギーを供給するための事業への投資こそが、今回、菅首相の唱えている240兆円の投資ということになるようなのです。

 

しかし、高速増殖炉もんじゅ」の問題にも示されますように、現状におきまして、日本国内で、クリーン・エネルギーの開発が進んでいるわけではありません。従いまして、2050年までという期限が定められている点を考えますと、既存の技術に投資が向かう可能性の方が、むしろ高いと言うことができます。

 

 そこで、太陽光発電風力発電に目を向けてみますと、太陽光パネルの主な生産国は中国であり、莫大な二酸化炭素を排出しながらソーラーパネルを製造しているという問題があります。中国企業に投資し、日本の電力需要にあった電力供給に必要とされる太陽光パネル発展途上国として位置づけられている中国から大量に調達した場合、その莫大な生産量によって、二酸化炭素排出量は、さらに増大することが予測されます。加えて、粗悪品である可能性も指摘することができます(すぐに故障する)。仮に、二酸化炭素が温暖化の犯人でしたならば、2050年が来る前に、地球は深刻な事態に陥ってしまうことになるかもしれません。すなわち、2050年を期限としているがゆえの、クリーン・エネルギーへの膨大で、短期集中的な代替需要(特需)が、むしろ地球環境をさらに悪化させる可能性があるのです。

 

 また、クリーン・エネルギーとして、ガス会社などは、ガスを水素に代替させる製品の開発、自動車産業は水素エンジンの開発を計画しているようですが、技術的に難しいレベルにあるようです。

 

 このように考えますと、クリーン・エネルギー事業への投資は、リスクが高い可能性があるのです。スペースシャトルの開発に、米国は莫大な国家予算をつぎ込みました。しかしながらその計画は失敗したように、日本企業の投資が失敗し、日本企業の保有する預金の240兆円のすべてが無に帰した場合、日本経済の足腰は、弱くなると予測することができます。社内留保は、今般のコロナ禍にあって、雇用と企業の存続を少なからず支えておりますように、緊急・非常時におきまして有用です。日本企業は、くれぐれも、政府、否、その背後にあるイルミナティ―によって“身ぐるみをはがされないように”、安易な投資には気を付けねばならないでしょう。