時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ハンセン病患者の方々には謝罪ではなく感謝を

 昨日の記事に続きまして、本日も、ハンセン病患者の方々の問題について考えてみたいと思います。本日の記事のテーマは、”謝罪より感謝を”です。

 ハンセン病とは、感染病であるため、国としても、隔離という特別の措置をとる必要があったことは、昨日、既に書きました。感染防止と患者保護の観点において、たとえ裁判所において隔離措置が採られたとしても、やむを得なかった側面があります。ですから、国の政策の被害者と位置付ける謝罪には、疑問があるのですが、仮に、何らかの行動をとるとしますと、それは、感謝ではないかと思うのです。

 ハンセン病の患者数は、1900年には3万人ほどを数えましたが、1907年に「癩予防ニ関スル法律」が制定されて以来、減少を続けました。1919年には、約半数の1万6千人に激減しており、今日では、新規患者は年に5から6人程度とのことです。抗ハンセン病剤による治療が始まったのは1955年頃なそうですので、この患者数の大幅な減少は、国の隔離措置の結果によってもたらされたと考えざるを得ません。今日、国民が、健康な生活が送れるのも、当時、ハンセン病患者の方々が、不本意ながらも治療所での生活を送ってくださったからに他ならないのです。公衆衛生の向上のために、家族から離れ、不自由な生活に耐え忍んでこられた方々には、感謝と慰労の言葉こそ、望ましいのではないでしょうか。

 ハンセン病への感染は、他の病気と同様に、誰が悪いわけでもありません。このように考えますと、ここで国が謝罪すること自体、奇妙なことであります。未だに治療所で生活されている方々もおられるそうですので、治療所にあっても、生き甲斐を感じられるよう手助けをすることが、国として患者の方々に報いる方策ではないかと思うのです。

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