時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国は力でしか抑えられない現実

  先月12日に常設仲裁裁判所で下された南シナ海問題に関する判決に対して、全面敗訴となった中国は、判決を”紙くず”扱いし、あくまでも”南シナ海は中国の領土”とする主張を貫く構えです。国際法秩序を破壊する行為なのですが、今日に至るまでの一連の経緯から、中国について、一つだけはっきりしたことがあります。

 南シナ海における中国の人工島建設や軍事拠点化については、当初より、アメリカは懸念を示しつつも、目立った批判や行動は控えていました。特にオバマ政権の前期は親中路線にあったことから、黙認といってもよい状態が続いたのです。しかしながら、度を越した中国の海洋侵出に対して危機感を抱いたオバマ大統領は、習近平主席のワシントンD.C.訪問を機に、南シナ海問題を首脳会談の議題に載せ、習主席から南シナ海での活動停止の約束を取り付けます。しかしながらこの約束が反故にされたことで、アメリカは遂に、航行の自由作戦を開始するのです。米中合意は、海の藻屑と消えたのですが、この際の中国の態度で明確となったことは、中国は、合意を順守しない国であるということです。中国は、南シナ海の領有権問題については、当事国間での話し合いに持ち込もうとしていますが、軍事大国であるアメリカとの合意さえ平然と破るのですから、中国との話し合いは無駄でしかありません。

 そして、今般の仲裁判決にも中国は従おうとはせず、法の拘束力さえも無意味であることを、自らの行動で全世界に知らしめています。合意でも法でも中国を抑えることができないとすれば、後は、力しか手段が残されていません。経済制裁で間接的に中国を疲弊させ、軍事力を削ぐにせよ、武力で直接に国際法を執行するにせよ、何らかの措置を採らない限り、中国の領土拡張主義を止めることはできないのではないかと思うのです。

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