時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

東京大会3兆円はオリンピック自然消滅の道

 東京オリンピックの費用が3兆円にも上るとする試算は、東京都民のみならず、日本国民にも衝撃を与えております。そして、もう一つ、衝撃を受けた人々がいるとしますと、それは、将来、オリンピックを開催したいと望んでいた全世界の都市です。

 当初の予算が3013億円というのですから、膨れ上がった3兆円の額に驚かない人はいないはずです。現在、この問題は深刻な政治不信をもたらしており、如何なる理由であれ、納得しない人の方が多いはずです。日銀の、2%のインフレ目標さえ到達できていない状況にありながら、オリンピックの経費のみは、恐るべき率で”インフレ”を起こしているのですから。マスコミ等の説明に拠りますと、ロンドンオリンピックも予算オーバーが著しく、当初見積もりを大幅に越えて2兆円に達したそうです。ロンドン地下鉄テロ事件などを背景に、テロ対策のための警備費などが嵩んだそうですが、そのロンドン大会と比較しても、東京五輪の費用は1兆円も上回っています。

 そして、近年のオリンピック開催に見られる費用の巨額化は、オリンピックの行方に暗い影を落としています。開催に2兆から3兆円もの費用がかかるとすれば、開催地として立候補する都市がなくなってしまうからです。しかも、ブラジル大会が示すように、然したる経済効果も期待できないとすれば、国民からの支持を得ることもできないでしょう。実際に、2024年の夏季オリンピックについては、ローマ市が財政難を理由に立候補を取り下げています。

 東京大会の費用圧縮は、東京都の問題であると共に、オリンピックの今後にも多大な影響を与えます。低予算でのコンパクトな大会を実現しませんと、手を挙げる都市がなくなり、オリンピックそのものが自然消滅してしまうのではないかと思うのです。

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