時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

‘皇室劇場’の背景にフランシスコ派VS反・フランシスコ派?

  今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。豊臣秀頼イエズス会との関連の深いキリシタン大名、大谷吉嗣の子である可能性が高いことは、イルミナティーと‘皇室劇場’との関連を解くヒントとなるようです。そこで、この問題を解くための前提条件として、大航海時代におきまして、イエズス会には、フランシスコ派と反・フランシスコ派があったことに注目してみる必要があるようです。
 
4月13日付本ブログにて述べましたように、フランシスコ・ザビエル、当時の日本布教区の責任者であったフランシスコ・カブラルFrancisco Cabral1529 - 1609年)、「ドン・フランシスコ」の洗礼名を持つ大友宗麟など、アッシジのフランチェスコ1182- 1226年)に因んで「フランシスコ」の名を有するイエズス会士たちは、イエズス会内のフランシスコ派であったと考えられます。アッシジのフランチェスコにつきましては、本ブログにて再三にわたって指摘しておりますように、「フランチェスコは貧しさを礼賛することにかけては徹底しており、物質的な豊かさのみならず、精神的ないし知的な豊かささえも認めなかった」という学問を不必要と見なす反知性主義、非文明礼賛主義をその特徴としております。16世紀、イエズス会の後にフランシスコ修道会(アルカンタラ派)も来日しており、イエズス会内のフランシスコ派は、フランシスコ修道会(アルカンタラ派)と協力関係にあったと推測することができます。
 
フランシスコ派に対して、イエズス会内には、イエズス会東インド管区の巡察師であったイタリア人宣教師のアレッサンドロ・ヴァリニャーノAlessandro Valignano / Valignani1539215 - 1606120日)を中心に、反・フランシスコ派も存在しておりました。反・フランシスコ派は、知性主義・文明主義を特徴としており、こうした大きな思想的違いから、イエズス会内においてフランシスコ派と反・フランシスコ派は鋭く対立していたのです。2017年5月29日付本ブログにて扱いましたように、ついにヴァリヤーノは、カブラルを解任、追放しております。
 
そこで、豊臣秀吉、大谷吉嗣、豊臣秀頼の3者はそれぞれどちらの側にあったのか、と言いますと、まず、秀吉は、以下の点から、反・フランシスコ派であったと考えることができます。
 
①九州平定後、住民の強制的なキリスト教への改宗や神社仏閣の破壊といった神道・仏教への迫害、さらにポルトガル人が日本人を奴隷として売買するなどといったことが九州において行われていたことが発覚すると、秀吉はイエズス会準管区長でもあったガスパール・コエリョGaspar Coelhoを呼び出し問い詰めた上で博多においてバテレン追放令を発布している。「住民の強制的なキリスト教への改宗や神社仏閣の破壊といった神道・仏教への迫害」は大友宗麟(ドン・フランチェスコ)が行っていたことであり、また、奴隷貿易もおもにフランシスコ派が秘かに従事しいたことから、バテレン追放令を発布した秀吉は、フランシスコ派を嫌っていたと考えることができる。
 
②翌慶長2年(1597年)、秀吉は朝鮮半島への再出兵と同時期に、イエズス会の後に来日したフランシスコ会(アルカンタラ派)の活発な宣教活動が禁教令に対して挑発的であると考え、京都奉行の石田三成に命じて、京都と大坂に住むフランシスコ会員とキリスト教徒全員を捕縛し処刑を命じている。Wikipediaによると「三成はパウロ三木を含むイエズス会関係者を除外しようとしたが、果たせなかった。25日、日本人20名、スペイン人4名、メキシコ人、ポルトガル人各1名の26人が処刑された」そうであり、イエズス会関係者とは、特に、イエズス会内のフランシスコ派であったと推測することができる。このことから、秀吉が、特に、アッシジのフランシスコの思想を嫌っていたこともわかる。
 
③秀吉は、反・フランシスコ派のヴァリニャーノがローマに派遣した天正少年使節団が帰国すると歓待し、伊東マンショに秀吉に仕官するよう要請するなど、ヴァリニャーノを支援していた。
 
このような3点から、秀吉につきましては、反・フランシスコ派であったと考えられます。
 
大谷吉嗣につきましては、大友宗麟(ドン・フランチェスコ)やフランシスコ派と考えられるコエリョとの親密な関連から、フランシスコ派であったようです。コエリョが、バテレン追放令が発布されると、大友宗麟有馬晴信に対して、キリシタン大名を糾合して秀吉に敵対することを求め、自身もその準備に乗り出した理由は、秀吉が反・フランシスコ派であったことに求めることができるかもしれません。
 

では、秀頼はどうであったのでしょうか。


 

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(続く)