時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

日中関係は”赤ずきんちゃん”?

今月29日、中国から曹剛川国防相が来日しました。この訪日に際して、日中間の防衛相会談が持たれたのですが、両者のやり取りを聞いてみますと、どうしても小さな頃に読んだ”赤ずきんぢゃん”のお話を思い出してしまうのです。 赤ずきんちゃん:どうして狼さん…

死刑廃止の前に殺人の撲滅を

死刑廃止につきましては、欧州諸国が積極的に推進キャンペーンを展開していることもあって、我が国でも、廃止に賛成する論者は少なくありません。しかしながら、死刑判決にあたいする犯罪が、他者の生命を奪うという非人道的な行為であることを考えますと、…

天災よりも怖い北朝鮮の人災

本日の日経朝刊の一面には、日本国政府が、北朝鮮で発生した洪水被害に対して人道支援を行う方向で検討を開始している、との記事が掲載されていました。死者は数百人に上るとの情報もあるようですが、北朝鮮の国民を死と絶望に至らしめた最大の災害は、過酷…

教育の使命と教職員組合運動とのミスマッチ

我が国では、日教組と呼ばれる教職員組合が全国レベルで組織され、学校教育に対して隠然たる影響力を及ぼしています。近年に至って、組織率が低下したとは言われていますが、教職員が教育内容にまで踏み込むことは、果たして許されることなのか、と考え込ん…

閣僚ポストと政治家―卵が先か、鶏が先か―

本日、阿倍政権の改造内閣の顔ぶれが決定されたようです。そこで、今日のブログでは、閣僚ポストと政治家との関係を、あらためて考えてみることにします。 近年に至るまで、組閣を行うに際しての選任基準が、必ずしも実力主義ではなかったことは、よく知られ…

基本的な人権と参政権の区別

外国人への参政権付与が議論されるに際して、この権利を基本的人権の範疇に含めて付与を主張する論者は少なくありません。政治に参加する権利は、その国の国民であるとなかろうと、平等に保障されるべきである、と。しかしながら、個々人の生命、身体、財産…

国債の利払いが金融政策と予算を圧迫する

現在の累積赤字国債の額は、国と地方とを合わせて1000兆円ほどに達していると言われています。財政赤字は、現代世代と将来の世代間の問題として論じられることが多いのですが、実のところ、この問題は、今日取り組まなくてはならない緊急の問題でもあります。…

天皇と民主主義が両立した理由

今月22日、アメリカ西部のミズーリ州カンザスシティにおいてブッシュ大統領が行った演説は、戦前の日本国とアルカイダを同一視するものとして、批判的に報道されています。しかしながら、この議論を機に、何故、戦後の日本国において、天皇の存在と民主主義…

ヨーロッパ諸国の死刑制度の原風景

死刑制度については、ヨーロッパ諸国が人道を掲げて廃止を主張していることから、我が国でも、最近では、廃止論が多く聞かれるようになりました。死刑制度とは、人の生命がかかわる問題ですので軽佻には議論できないのですが、議論を進めるにあたって、まず…

日英同盟に学ぶ日米同盟の行方

しばしば、戦前の日本国の孤立化の一端は、1921年の日英同盟の解消にあったと言われています。この日英同盟の前例は、現在の日米同盟の行くへを考えるに際しても、何か重要な示唆を与えているように思われるのです。 そもそも、日英同盟の解消とは、1921年の…

古くて新しい同盟の信義

多くの人々は、封建時代に称揚された”信義”や”忠誠心”を、過去の道徳規範として見なしがちです。このため、現代の国際政治にこの言葉を持ち込みますと、何か、場違いな感じさえ与えるようになっています。しかしながら、同盟が、人類史に普遍的な安全保障に…

経済政策をめぐる自民・民主の呉越同舟

経済・通商政策には、大きく分けて二つの考え方があります。その一つは、自由主義の系譜であって、市場経済と自由貿易主義を是とする立場です。もう一つの系譜は、その反対に、市場への政府介入を許容し、自由貿易体制下にあっても自国産業の保護政策を図ろ…

日本国の保守主義の二つの流れ

実際には、かなりの相違がありながら、おなじ範疇に一緒くたにされていることは少なくありません。例えば、現在の日本国の保守主義の系譜にも、二つの流れがあるように思うのです。 第一の系譜は、大日本帝国憲法の時代に理想を求め、この時代への回帰をもっ…

人類の平和への道は国境確定から始まった?

人類の歴史を振り返りますと、戦争の最大の原因が、土地争いにあったことは容易に見て取ることができます。人間の集団が未だ一定の地域に定住せず、どこへでも行くことができた時代には、戦争は、必ずしも倫理的に非難される行為ではありませんでした。むし…

国民を守りたい人vs.平和を守りたい人

皆さんは、国民を守りたい人でしょうか、それとも、平和を守りたい人でしょうか。この両者は、同じようで全く違う次元のものであり、時にして対立することもあります。 両者の対立の典型は、我が国の憲法第9条と対外政策の選択をめぐる意見対立に表れていま…

言葉足らずな憲法第9条

日本国憲法の第9条の文言の解釈をめぐり、常々、不毛の議論に陥る原因の一つには、この条文が言葉足らずである、ということにもあるようです。 日本国憲法の制定時は、戦後直後(1946年)ということもあって、各国の思惑や理想が入り乱れた状況にありました…

戦没者の方々を心から悼んで

本日8月15日は、昭和天皇の詔勅により第二次世界大戦の終結が動かぬものとなった、運命の日として日本国の歴史に深く刻まれています。毎年、蒸し暑い夏の一日でありながら、この日ばかりは、何か、厳粛な空気がこの国を覆っているように思えるのです。 先の…

信頼性を欠いた平和運動

戦争の悲惨さについては、書物や映像を通して誰もが良く知っており、今日では、平和は人類共通の願いとなっています。しかしながら、いざ、平和運動、あるいは、反戦運動ということになりますと、何故かみな、一歩引いてしまうのです。 その最大の理由は、イ…

参議院の存在意義を問う

国家の仕組みとは、ついつい、現状を当り前のことのように捉えがちです。日本国の両院制についても、おそらく、これまでその存在意義を疑った人はそう多くはないかもしれません。 両院制の原型を歴史に尋ねますと、1)古代ギリシャ・ローマ時代のアレオパゴ…

戦後の占領政策はアメリカ単独ではない?

終戦以来、日本国では、戦後の基本的な国家体制を形作ったのは、太平洋戦争(大東亜戦争)を戦ったアメリカである、と信じられてきました。戦争でアメリカに負けたのであるから、当然に、アメリカの占領政策を受けたのである、と。 この考え方には、一つの見…

戦後の日本を救った自由貿易主義

開国以来、日本国は、人口増加圧力に苦しみ、これを解決するために、北米や南米諸国への海外移民政策を積極的に実施することになりました。日露戦争後にアメリカ政府が日系移民排斥に転じると、国内の人口問題は深刻さを増し、やがて、農村部の圧力を背景に…

国に殉じた方々との約束

本日、今年の8月15日は、日本国の全閣僚が靖国神社への参拝を控える、との報道がありました。中国、あるいは、公明党への配慮との見方も示されていますが、この記事は、何か大切なことを置き忘れてしまったような、一抹のさびしさを感じざせるのです。 そ…

民主党は国連追従外交?

テロ対策特別措置法の延長に反対する民主党のスタンスは、”対米追従外交”である、という一点に尽きるようです。しかしながら、民主党もまた、”国連追従外交”という、別の従属への道を歩もうとしているように見受けられるのです。 国連追従外交が、不安定であ…

軍縮が進まない性悪説的理由

戦争を抑止する手段として、軍縮は、第一次世界大戦以来、何度となく繰り返し試みられてきました。しかしながら、軍縮は、必ずしも思ったほどの成果を挙げることができず、第一次世界大戦後には、日本(統帥権干犯問題…)やドイツ(ナチスの台頭…)の軍拡を…

戦争は一人だけではやめられない

戦争とは、一国のみの行為ではないことは、言うまでもないことです。日常の”けんか”でも見られるように、たとえ、自分自身は”けんか”をする意思をもたなくとも、相手方から一方的に攻撃されたり、仕掛けられたりすることは、当然にあり得ることです。 この点…

公明党の合憲性を問う裁判を

創価学会という新興宗教団体を支持基盤としている公明党が、連立政権として政権与党に加わっている問題は、これまで、既成事実として不問に付されてきた感があります。しかしながら、日本国の将来を考えますに、果たしてこの状態を放置してよいのか、はなは…

裁判員制度と民主主義との奇妙な組み合わせ

裁判員制度の導入が決定された時、その理由として、司法の民主化が真っ先に挙げられました。しかしながら、この制度に見られる司法と民主主義との組み合わせは、何か、とても奇妙なのです。 司法制度においては、何にもまして、中立性と公平性を確保すること…

憲法違反かもしれない裁判員制度

国民の中から抽選で裁判員を選ぶという裁判員制度は、2009年から制度の運営が開始される予定のようです。議論らしい議論なくして導入が決定されたのですが、この制度の導入には、どうしても腑に落ちない点があるのです。 まずはじめに疑問としてあげられるの…

分散型選挙システム導入の提言

現在の我が国の政治システム(議院内閣制)では、国民は、議会選挙でしか政策を選択できない、という欠点があります。しかも、今回の参議院選挙のように衆参でねじれ現象がおきてしまいますと、一体、どの政策が国民に支持されているのか、全く分からなくな…

参議院選挙が政権選択の選挙ではない憲法上の理由

今回の参議院選挙の結果を受けて、マスコミなどでは、大きく政権交代が取り沙汰されています。この流れの中で、”政権を交代しても良いのではないか”、と考える方々もおられると思いますが、参議院選挙は、政権選択の選挙ではない、れっきとした憲法上の理由…