時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

基本的な人権と参政権の区別

 外国人への参政権付与が議論されるに際して、この権利を基本的人権の範疇に含めて付与を主張する論者は少なくありません。政治に参加する権利は、その国の国民であるとなかろうと、平等に保障されるべきである、と。しかしながら、個々人の生命、身体、財産に関わる基本的な人権と、限定された枠組みを持つ政治に参加する権利とは、そもそも性格の異なる権利であると考えられるのです。

 前者に関しては、刑法の対象範囲を見ても分かるように、外国人に対しても等しく適用されます。それぞれの国家が管轄権は持ちますものの、基本的人権の保障には普遍性があるのです。

 一方、後者の参政権は、国家と国民との関係が”たて”型となる政策領域―特に、防衛、安全保障、外交…―に関わりますので(個別性)、無限に”よこ”に広がることはできないのです。かりに、全ての人が全ての国の政治に参加する権利を持てる、ということになりますと、国境を超えて政治的権利・義務関係が錯綜し、早々政治は混乱の坩堝に陥ることになりましょう。

 外国人への参政権付与を議論するに先だって、まずは、それぞれの権利の性格の違いを十分に論じておく必要があると思うのです。