時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国の保守主義の二つの流れ

 実際には、かなりの相違がありながら、おなじ範疇に一緒くたにされていることは少なくありません。例えば、現在の日本国の保守主義の系譜にも、二つの流れがあるように思うのです。

 第一の系譜は、大日本帝国憲法の時代に理想を求め、この時代への回帰をもって現在の日本国の体制を改革しよう、というものです。この復古主義的な考えに基づきますと、天皇は、立憲君主としての姿で立ち現われ、主権者にして統治権の総攬者という立場に置かれます(政教一致型)。

 第二の系譜は、日本国の歴史の流れにおける伝統を重んじつつ、日本国の政治を時代に合わせて進化させてゆこうとする立場です。この考え方は、バーグ流の保守主義に近く、古いものと新しいものとの取捨選択が伴います。そうして、天皇は、古代から連綿と伝えられたきた祭祀を以って伝統を継承し、国家と国民の安寧を祈る伝統的な祭祀者の姿に戻られることになります(政教分離型)。

 大日本帝国憲法は、プロイセン憲法を範として作成され、未だ立憲君主制が時代の主流であった19世紀という時代を背景にしています。しかしながら、現代という時代を考えますと、古いものと新しいものとを慎重に吟味して選びだしてゆく過程においてこそ、真に価値あるもの、後世の国民に残すべきものが見えてくるのではないか、と思うのです。