時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

裁判員制度と民主主義との奇妙な組み合わせ

 裁判員制度の導入が決定された時、その理由として、司法の民主化が真っ先に挙げられました。しかしながら、この制度に見られる司法と民主主義との組み合わせは、何か、とても奇妙なのです。

 司法制度においては、何にもまして、中立性と公平性を確保することが重要なポイントとなります。裁判に偏りが生じてしまいますと、制度自体が信頼性を失い、機能しなくなってしまうからです。このため、司法は、政治、ならびに、すべての私人からも独立していなければなりません。

 政治力学が働く民主的な選挙は、裁判官を選出する制度としては適切ではないのは確かです。それでは、抽選という方法は、民主的なのでしょうか?選挙では、それぞれが、平等に一票の選ぶ権利を行使できますが、抽選では、選ぶ権利は保障されません。平等なのは、抽選に当たる”確率”であって、抽選で選ばれた人のみが、特別に司法権の行使という権力を与えられるのです。

 本当は、司法の中立性と公平性に鑑みますと、専門家である裁判官よりも、抽選で選ばれた一般人の方が適している、という保障はどこにもないのです。司法制度は、いたずらに民主化すれば良い、というものではなく、より司法の本質にそった制度改革が必要なように思うのですが、いかがでしょうか?