時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

戦後の日本を救った自由貿易主義

 開国以来、日本国は、人口増加圧力に苦しみ、これを解決するために、北米や南米諸国への海外移民政策を積極的に実施することになりました。日露戦争後にアメリカ政府が日系移民排斥に転じると、国内の人口問題は深刻さを増し、やがて、農村部の圧力を背景に、時代は、満洲事変へと向かって行くことになるのです。

 農業を基盤とした経済構造にあっては、人口過剰による土地不足は死活問題であり、日本国のみならず、土地不足にからんだ移民政策はどの国にも見られたことです。ヨーロッパ諸国から新大陸への移民もまたしかりです。

 第二次世界大戦における敗戦とは、満洲などの開拓地を失いことを意味しました。戦後、外地からの引揚者であふれかえった日本国は、再び、人口問題に苛まされるはずでした。しかしながら、この時、日本国は、国際貿易システムの大転換によって救われることになります。日本を救ったもの、それは、自由貿易義体制の確立でした。

 戦前の経済ブロック化が戦争の要因となったとする認識から、戦後、アメリカを筆頭とする連合国は、IMFGATT体制を構築します。この体制の中で、自由に貿易を行うことができるようになったことが、工業力に強みを持つ日本国に活路を与えることになったのです。

 歴史とは、何とアイロニーに満ちていることでしょうか。