時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

軍縮が進まない性悪説的理由

 戦争を抑止する手段として、軍縮は、第一次世界大戦以来、何度となく繰り返し試みられてきました。しかしながら、軍縮は、必ずしも思ったほどの成果を挙げることができず、第一次世界大戦後には、日本(統帥権干犯問題…)やドイツ(ナチスの台頭…)の軍拡を招くなど、逆効果の事例も少なくはありません。

 それでは、何故、軍縮は、失敗するのでしょうか。もちろん、まずは、国家間のパワーバランスの問題があります。軍縮の合意が、自国の劣位を決定づけてしまう場合、その状態を維持するのは困難になるからです。そうしてもう一つ、近年になって明らかとなった問題は、例え協調体制ができても、”抜け駆け国家”が現れるということです。

 北朝鮮やイランは、核拡散防止条約に違反して、勝手に核開発を進めましたが、これは、軍縮の怖さを図らずも証明してしまいました。何故ならば、”いっせいのせ!”で各国が武器を放棄しても、おずるをして保持している国があれば、その国が独り勝ちになることが明らかになったからです。悲しいことに、軍縮は、性悪説が現実を説明する限り、なかなか進まないのです。