時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

戦争は一人だけではやめられない

 戦争とは、一国のみの行為ではないことは、言うまでもないことです。日常の”けんか”でも見られるように、たとえ、自分自身は”けんか”をする意思をもたなくとも、相手方から一方的に攻撃されたり、仕掛けられたりすることは、当然にあり得ることです。

 この点から見ますと、戦争の放棄によって、地球上から戦争をなくすには、全ての諸国が同時に一切の武器を捨て去るしかありません(ほとんど不可能ですが・・・)。一国のみの戦争放棄では、平和は訪れないのです。加えて、軍事バランスの見地からも、力の空白は、むしろ、戦争の危険性を高める、とも指摘されています。この見地からしますと、日本国の戦争放棄が戦争を誘引するという、全く意図したことと反対の結果がもたらされることになるのです。

 

 憲法第9条につきましては、今日に至るまで、法文の解釈をめぐって様々な議論がなされてきました。憲法上の議論がかくも盛んであったにもかかわらず、一国のみの戦争放棄という方法によって、戦争というものが世の世から消滅するのか、という、より本質的な方法論については、残念なことに、まったく議論がなされてきませんでした。最大限に戦争を抑止するためには、現実的な方法についてこそ議論を深めるべきではないか、と思うのです。