時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

憲法改正の議論では第1条と第9条を切り離すべき

 昨日の日経新聞社の社説を読んでおりましたところ、ある一文に思わず視線が吸い寄せられてしまいました。その一文とは、日本国憲法制定時にあって、第1条と第9条がセットになっていた、というものです。

 戦争末期、日本国のポツダム宣言の受託に際して、連合国との間で国体の護持に関わる交渉が内密に行われていたことはよく知られておりますが、社説によりますと、戦後の憲法制定時にあっても、第1条の天皇の象徴としての地位と第9条の戦争放棄は、抱き合わせの取引条件とされたことになります。果たして、この説は、事実なのでしょうか。仮に事実であるとしますと、その影響は計り知れません。何故ならば、今後、憲法第9条の改正が議論されるに際して、必ず、第1条の問題をも合わせて論じなくてはならなくなるからです。憲法第9条擁護派の人々は、第1条を人質に取る可能性もあります(もちろん、第9条の改正が、必ずしも第1条の改正を伴うわけではありませんが…)。また、最近、皇室の政治的とも解される発言が危惧されておりますが、9条擁護と受け取られる発言をされますと、国民の多くから、保身を疑われることにもなりかねません(国家・国民の安全の軽視…)。

 実のところ、国民は、こうした裏事情は初耳なわけですし、真偽のほども不明です。また、講和条約発効後にあっては、占領期の密約が有効であるとも思えません。時代の変化に合わせて憲法改正を議論してゆく上でも、第1条と第9条は、切り離して考えるべきではないかと思うのです。

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