時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

五輪エンブレム盗作問題-全てのデザイナーにチャンスを

 先日、2020年に予定されている東京オリンピックパラリンピックに際して使用されるエンブレムが決定されたところ、ベルギーの劇場で使用されているデザインの盗作ではないか、とする問題が持ち上がっております。この盗作問題、デザイナーの世界を蝕んできた諸問題を、一気に表面化させた感があります。

 第一の問題点は、当然と言えば当然ですが、既に訴訟沙汰となっているように、当作品を作製した佐野研二郎氏が、ベルギー人デザイナーの盗用したのか、という点です。佐野氏は、サントリーのトートバックのデザインにおいては、既に”パクリ”を認めていますので、この事件は、氷山の一角である可能性もあります。第二の問題点は、第一の問題点とも関連しますが、実際に、選考後に盗作騒動が起きてしまったわけですから、裁判の判決如何に拘わらず、コンペティションにおける調査や審査が杜撰であったと言わざるを得ないことです。全世界で使用されるオリンピックのエンブレムですので、念には念を入れて選考すべきなのですが、実際にはその逆であったようなのです。第三番目の問題点は、この問題の発生原因に関わることです。デザインの世界は、広告代理店を含む”閉鎖的な寡頭勢力”によって実権が握れており、公平なコンペティションが実施されていないという実態です。結果は最初から決まっているのであり、一種の利権絡みの”八百長”が蔓延っていたことになります。この状態では、優れた才能が育つはずもありません。

 考えても見ますと、選定されたエンブレムのデザインは、色調が暗い上に凡庸であり、デザインとしての斬新さやクリエーティブな躍動感を感じさせません。その原因が、デザイン界における内輪だけを優遇する閉鎖性と腐敗体質にあるとしますと、五輪エンブレム盗作事件は、この体質を一掃するチャンスともなります。そして、自由で開かれたコンペティションが実現すれば、2020年の東京オリンピックパラリンピックに相応しいデザインは、おのずと登場してくるのではないかと思うのです(該当作品がなければ、誘致の際のエンブレムの継続使用でもよいのでは…)。

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