時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国民を守りたい人vs.平和を守りたい人

 皆さんは、国民を守りたい人でしょうか、それとも、平和を守りたい人でしょうか。この両者は、同じようで全く違う次元のものであり、時にして対立することもあります。

 両者の対立の典型は、我が国の憲法第9条と対外政策の選択をめぐる意見対立に表れています。平和を守りたい人は、憲法第9条の堅持と平和とを同一視していますので、護憲派となります。一方、国民を守りたい人は、憲法第9条が、国民を守るための障害となっていると考えますので、改憲派となるのです。

 それでは、どちらの態度が正しいのでしょうか?ここでまず、述べておかなければならないことは、平和を守りたい人は、戦争が発生するまでの間しか、その活動期間を持たないことです。つまり、実際に戦争が発生してしまいますと、もはやなす術がなく、仮に他国から攻撃を受けた場合には、自国民を救うことはできなくなります。いざ戦争となって、”政府はもっと国民のことを考えて準備をしておくべきであった”、と批判しても、”後の祭り”となってしまうのです。このように考えますと、国民を守りたい人の主張は、とかくに右翼的というレッテルを貼られて批判されがちですが、国民の安全ということを考慮しますと、決して全否定されるものではないようなのです。

 平和は守りたい人であっても、国民の生命、身体、財産を危険に晒すことにば危機感を覚えるでしょうし、また、国民を守りたい人であっても、最大限に平和を維持することに反対しているわけではないでしょう。こうした問題は、よくよく冷静に考えてみる必要があると思うのです。