時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

参議院選挙が政権選択の選挙ではない憲法上の理由

 今回の参議院選挙の結果を受けて、マスコミなどでは、大きく政権交代が取り沙汰されています。この流れの中で、”政権を交代しても良いのではないか”、と考える方々もおられると思いますが、参議院選挙は、政権選択の選挙ではない、れっきとした憲法上の理由があるのです。

 それは、第一に、参議院議員の任期は6年であり、かつ、半数改選の制度が設けられており、むしろ、長期的な視野から国政を審議する役割を担っていること、第二に、首相と議会との信任関係は、専ら衆議院との間に成立していること(内閣不信任案の提出権は衆議院のみにある一方で、その対抗手段としての議会の解散は、衆議院を対象としている)、第三に、首相指名に関しては、衆議院の議決が優先することなどです。こうした理由がありますので、参議院一票の格差衆議院のそれよりも大きいことも、ある程度許容されているのです。

 衆参問わず、国政選挙の度ごとに政権を交代できるとなりますと、日本国の政治は、ますます不安定化し、混迷を深めてしまうことになりましょう。国政上のルールはルールとして守ってゆきませんと、憲法秩序は、いつの間にかなし崩しになってしまうように思うのです。