時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

古くて新しい同盟の信義

 多くの人々は、封建時代に称揚された”信義”や”忠誠心”を、過去の道徳規範として見なしがちです。このため、現代の国際政治にこの言葉を持ち込みますと、何か、場違いな感じさえ与えるようになっています。しかしながら、同盟が、人類史に普遍的な安全保障にかかわる問題であると捉えますと、この言葉には、現代にも通じる何か重要なものが含まれていると考えられるのです。

 封建時代にあって、これらの言葉が強調された理由は、まずは、自国、あるいは、自己の領地を確実に守らなければならない、という絶対的な必要性があったからです。封建契約とは、相互に軍事的な援助を約することによって、協力して自己防衛を行うことを目的としていました。古めかしい響きを持ちながらも、封建制度とは、一種の集団的安全保障体制であった理解することもできるのです。

 この体制にあって、仮に約束が守られない、あるいは、片方が一方的に約束を破るということになりますと、それはもう、相手方にとっては、国家滅亡の危機に立たされることを意味しました。安全保障体制とは、相互の”信義”の裏打ちがあって、はじめて機能するものなのです。

 今日、テロ対策特別措置法の延期問題に端を発して、日米同盟の行方に暗雲が立ち込めるようになっていますが、同盟の”信義”の現代における意義を、もう一度確認することは、無駄はないと思うのです。