時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

死刑廃止の前に殺人の撲滅を

 死刑廃止につきましては、欧州諸国が積極的に推進キャンペーンを展開していることもあって、我が国でも、廃止に賛成する論者は少なくありません。しかしながら、死刑判決にあたいする犯罪が、他者の生命を奪うという非人道的な行為であることを考えますと、順序としては、殺人の撲滅の方が先なのではないか、と思うのです。

 刑罰とは同害報復から始まりましたが、本来、人の命の重さには違いはないはずです。しかしながら、死刑を廃止しますと、何らの罪もない他者の命を、自らの利己的な動機から殺めた方の生命を重んじられることになります。死刑廃止制度とは、善人よりも悪人の方の生命を守る制度となるかもしれません。

 このように考えますと、死刑廃止運動に力を注ぐよりも、まずは、徹底的に殺人事件をなくすように、最大限の努力を払うことが先決なのではないでしょうか。昨今のニュースでは、想像を絶するような残酷な方法で殺人を行う犯罪者が、この世に実際に存在していることを報じています。非道な殺人がなくならない限り、死刑をなくすことはできないのではないか、と思うのです。