時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

人権救済機関による人権侵害を国際人権委員会が救う?

 千葉景子法相は、就任に際して人権擁護法の制定に前向きな意向を示したと伝わります。民主党マニフェストには、(1)人権侵害の個人通告制度を定めた国際人権条約議定書の批准と、(2)国内的には人権救済機関を設置が記載されていましたが、人権擁護法案の内容を考えますと、我が国の人権救済機関の活動を、人権侵害行為として人権委員会に訴えるという事態も発生しそうなのです。

 そもそも、国会への提出が予定されておりました人権擁護法案には、令状なしの家宅捜査など、人権委員会の権限が、訴えられた側の自由や権利を侵害するのではないか、という懸念の声がありました。しかも、訴える側の主観が判断基準となりますので、罪刑法定主義の原則にも反し、”恐怖政治”を思わせる国民監視機関への変貌が心配されていたのです。その一方で、国際人権委員会の個人通告制度とは、そもそも国家権力による侵害を主たる対象としており、人権擁護法案が射程に入れている民間での事件を予定しているわけではありません。むしろ、人権擁護法案が設立する人権救済委員会といった公的機関がその対象なのです。

 民主党の政策が実現した結果、人権救済機関による国民の自由や権利の侵害を救うのは、国際人権委員会しかない、といった状況に陥るとしたら、何と皮肉なことでしょうか。

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