時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『China 2049』と『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国の謀略史

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。今日は、番外編として、昨今、反響を呼んでおります『China 2049』に関連して、『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国問題を扱います。
 
12世紀末の院政期、後白河法皇によって、『吉備大臣入唐絵巻』(米国ボストン美術館所蔵)という絵巻物がつくられます。中国に遣唐使として渡った吉備大臣は、中国側に幽閉され帰国を許されないという状況に陥りますが、中国側によって挑まれた様々な勝負事に勝利、もしくは、切り抜けることで、ようやく、帰国できるようになる、といったあらすじの絵巻となります。
 
この絵巻の吉備大臣には、実在するモデルがあり、留学生として中国に長年逗留し、帰国後は、遣唐使として2度にわたって、渡唐した8世紀の朝廷官人、吉備真備であるとされております。そして、その吉備大臣と中国側との間の鋭い対立という絵巻の内容は、当時の日中間における緊迫した情勢を伝えているようなのです。
 
私は、古代・中世史家として、本ブログに記事を書いておりますが、では、どのような研究をしているのかと申しますと、日本書紀紀年法が、そのメインとはなっておりますが、絵巻、特に、後白河法皇の絵巻には興味を持っており、2009年に、『吉備大臣入唐絵巻 知られざる古代中世一千年史』(勉誠出版)を刊行しております。
 
この拙著におきまして、『吉備大臣入唐絵巻』という一本の絵巻を読み解くことにより、我が国が、古代より長きにわたって、幾度となく、中国によって侵攻される危機に直面してきた歴史を明らかといたしました。すなわち、1千年以上にわたって、中国問題は、我が国の安全保障にとりまして、看過されえない重要な外交問題であり続けてきたのです。
 
翻って、昨今、マイケル・ピルズベリー氏の『China 2049』が、注目を集めておりますように、「世界覇権100戦略」として、中国が、世界征服を狙い続けていることが、明らかとなってまいりました。
 
『吉備大臣入唐絵巻』を踏まえますと、中国側の体質は、古代から変わっていないようです。1949年以降におきましては、世界制覇をも狙うようになった、と言うことができるでしょう。『吉備大臣入唐絵巻』に登場する中国は、日本滅亡をも企画していたようです。絵巻は、世界レベルにおきましても、中国が、自らの覇権の確立に障害となるような国々の滅亡を計画している可能性を示唆している、とも言えるでしょう。

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(番外編も続きます)