時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国内外の情勢分析にも善悪同時並行の観点が必要

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。『黙示録』で警告されている「偽預言者false prophet」は、現代においてこそ、真剣に考えるべき問題です。
 
キリスト教の異端は、黒マリア信仰の秘かなる担い手であるイエズス会であると言うことができますが、カトリックにおけるイエズス会の影響は、カトリックの総本山であるサンピエトロ寺院のシスティナ礼拝堂の壁画にも読み取ることができます。
 
以前、本ブログにて述べましたように、ルネッサンス時代にミケランジェロによって描かれた天井画の人物たちは、完成当初は、すべて裸体であり、再降臨してくるイエス・キリストの姿も、当初は、裸体であったそうです。『聖書』「黙示録」では、人類は、遠い未来に、悲劇的で悲惨な状況に陥ると預言されているのですが、その救い主として再降臨してくるキリストが、裸体であったというのでは、あたかも、人類の行く末となる‘理想の世界’が、エデンの東の園であるかのような誤解を人々にもたらしているのです。
 
 「野獣the beasts」、「赤い竜the red dragon」、「偽預言者false prophet」による支配からの解放が、これらが理想とする‘裸族の世界’でしたならば、これは、‘悪い冗談’であると、多くの人々が、驚き呆れるか、悲観に暮れることになるでしょう。そして、これには、一つ理由があるようなのです。
 
それは、実は、ミケランジェロイエズス会士であった、ということです。ミケランジェロイエズス会への傾倒は、ローマにあったイエズス会の総本山、「道の聖母教会」の天上壁画を描くことを自ら申し出たことによって示されております(ただし、イエズス会が絡んでまいりますと、彫刻家のミケランジェロと画家のミケランジェロは、本当に同一人物であるのか、という疑問も提起することができます)。一説によりますと、黒マリアとは、非文明世界の女性を意味するそうです。
 
すなわち、カトリックに、イエズス会の思想が入り込むことにより、カトリックの普及は、二面性を帯びるようになりました。この地上に神様の御心にかなった立派な世界を築くことを目指す思想と、そして、一歩、一歩、「野獣the beasts」、「赤い竜the red dragon」、「偽預言者false prophet」による悪魔の支配を完成へと向かわせる思想という…。イエズス会が”偽善者”と称されたように、キリスト教には、文明と野蛮とが併存するようになっているのです。そして、その後の歴史は、”神は悪をも利用”し、”悪魔は善をも利用”するかのごとく、善と悪とがせめぎ合い、複雑に絡み合いながら進行するのです。
 
世界支配志向勢力は、野蛮思想と近い関係にあるようですので、この同時並行性を十分に解き明かし、かつ理解・分析した上で対応策を練る必要があります。すなわち、これからの国内外の情勢分析には、善悪二元論のような同時並行性の観点が必要とされてくるのです。

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(続く)