時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

革命の逆転装置としての”荒くれ男”の組織化

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。『二都物語A Tale of Two Cities』に登場するマルクスをモデルとしていると推測される「荒くれ男」が、なぜ特に問題であるのかといいますと、フランス革命の行く先を変えたことにあります。
 
フランス革命の基本的理念は、「圧政からの人々の解放」や「すべての国民の基本的権利や自由の保障(生命や財産などの保障)」にありました。フランス革命前夜のフランスでは、王室、貴族、僧侶以外の人々は、国家、貴族、教会によって重税を課せられ、働けども、働けども、経済的困窮を強いられる上、所有権、生存権、被裁判権も無い悲惨な状況に置かれておりました。「アンシャン・レジームAncient Regime(旧体制)」と称されているこうした状況、ならびに、自然権として基本的権利の保障を謳う啓蒙思想enlightmentの普及を背景として、政府による圧政への抗議・抵抗を通してよりよい社会を実現するために人々が立ち上がった、ところまでは、理解に難くありません。
 
ところが、フランス革命は、人々の願いも虚しく、恐怖政治(ジャコバン独裁)、すなわち、残虐なる野蛮な支配体制へと向かいます。その転換点となったのが、「荒くれ男」の登場です。『二都物語』は、地代を僅かばかりに定めて領民を思いやり、善政を行っていた侯爵(主人公の一人のチャールズ・ダーニー)の館に「荒くれ男」は火を着けて全焼させてしまう、という筋書きにしています。そして、この事件を契機に、その後、フランス国内では、何ら罪のない善男善女の国民が、あるいは元貴族階級であったという理由、あるいはスパイであるという容疑によって、裁判らしい裁判も行われず、次々にギロチンにかけられてゆくのです。すなわち、王室・貴族・僧侶に替って、今度はジャコバン政権が、全国民の殺生与奪の権利を握り、恣意的に行使する恐怖政治が出現するのです。
 
フランス革命ロシア革命が近似している点もここにあるかもしれません。1917年11月のロシア共産主義革命前夜、モンゴル系のカルムイック人、すなわち、「黒いユダヤ人」であったレーニンは、‘封印列車’と称される列車で秘かにモスクワに入ります。その後、ロシア革命は、ジャコバン独裁と同様に、ボルシェヴィキによる大量殺戮と掠奪が繰り返される恐怖政治、共産主義独裁体制の世界へと突き進んでゆくのです。
 
こうした類似点は、一般の人々の圧政者に対する抵抗心や復讐心を巧みに操つりつつ、その一方で、暴力装置としての「荒くれ男」たちを動員することで、イルミナティーは、人々を進むべき道から逸らせ、逆の方向、すなわち、非文明の世界へと誘導した可能性を示唆しています。イルミナティー以外の人々の基本的な権利や自由が踏みにじられる世界へと…。
 
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(続く)