時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『二都物語』にマルクスが登場?

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。フランスにやって来た‘荒くれ男’の風貌について、ディケンズは、『二都物語A Tale of Two Cities』において、さらに以下のようにも表現しております。
 
――青銅色の顔、頭から顎までもじゃもじゃの毛、ごわごわした毛の赤帽、手織りの生地と毛のままの獣皮をつづり合わせた粗服、切り詰めた生活のためにやせてはいるが、がっしりとした体格、そして眠っていながらも、きっと結んだ不機嫌そうな唇…(中野好夫訳『二都物語』(下)、新潮文庫、頁84――
 
服装こそ違え、「頭から顎までもじゃもじゃの毛」、「がっしりとした体格」、「きっと結んだ不機嫌そうな唇」といったこの‘荒くれ男’の風貌は、カール・マルクスを想起させるのではないでしょうか。マルクスは、長くロンドンに滞在しており、ジャーナリストであったチャールズ・ディケンズは、マルクスと面識があった可能性は極めて高いのです。英国にやってきたイルミナティー組織のメンバーであり、しかも、最も残忍で過激思想である共産主義思想による革命を唱え、1840年にはロンドンにて『共産党宣言』を出版していたマルクスを、ディケンズは、‘荒くれ男’として、『二都物語』に登場させたと考えることができるのです。
 
本年7月2日から6日にかけての本ブログにて、マルクスは、インド出身の「黒いユダヤ人」とする説を提起いたしました。生来粗暴でアバウトな性格であり、その風貌もヨーロッパ人には到底見えなかったマルクスの持つ残忍性をディケンズは見抜き、マルクスを小説に登場させることで、共産主義思想の母体であるイルミナティー思想の危険性について、英国民に警鐘を鳴らしたとも想像することができます。

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(続く)