時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ユダヤ人問題に一石を投じるレビ族中央アジア起源説

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。先日、読者の方から、東欧のユダヤ人の起源問題をめぐり、以下のような興味深い情報をコメントとして頂きました。
 
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GeneticistsReport Finding Central Asian Link to Levites(レビ族と中央アジアとの繋がりを発見した遺伝学者の報告)

 By NICHOLAS WADE(ニコラス ワード著)
 

Published:September 27, 2003(2003年9月27日刊)

 

A teamof geneticists studying the ancestry of Jewish communities has found an unusualgenetic signature that occurs in more than half the Levites of Ashkenazidescent.The signature is thought to have originated in Central Asia, not theNear East,which is the ancestral home of Jews. The finding raises the question of how the signature became sowidespread among the Levites, an ancient caste of hereditary Jewish priests ユダヤ人のコミュニティの起源を研究している遺伝学者チームが、アシュケナージユダヤ人のレビ族の実に半数以上に見られる遺伝的特徴を発見した。その遺伝的特徴は、中央アジア由来の特徴であり、ユダヤ人の先祖の地である中近東由来の特徴ではないと考えられるものであった。この発見は、どのようにして、この特徴が古来の伝統的司祭階級であるレビ族の間に拡がったのか、という疑問を提起している。). http://www.nytimes.com/2003/09/27/science/27GENE.html

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この報告は、確かに‘ユダヤ人とは何者であるのか’、といったユダヤ人の起源とその民族構成の複雑性をめぐって、興味深い論点を提起しているようです。本日は、推測され得る数々の仮説のうち、最も年代を遡るアーロン起源説について述べてみます。
 
仮に、レビ族が、紀元前13世紀、もしくは、紀元前12世紀頃の出エジプトの時点に、既に中央アジアとの繋がりを持っていたと考えますと、その理由として、以下の仮説を指摘することができます。
 
レビ族は、モーゼMosesの兄のアーロンAaronをその始祖とする支族であることから、モーゼとアーロンは、中央アジア系の民族であった。もしくは、両者は異母兄弟か異父兄弟であって民族を異にしており、少なからずアーロンは中央アジア系の民族の出身であった。「旧約聖書」によると、レビ族は、「土地を所有してはいけない民族」とされており、この点も、遊牧移動民族の特徴と符号している。すなわち、アーロンは、中央アジア遊牧民族の出自であり、このことによって、現在のレビ族の半数以上が、中央アジア起源の遺伝子を持っている。
 
出エジプトの際に結成された‘ユダヤ12(13)支部族’の世界は、これまで、カルディア(ユーフラテス川下流地域)、エジプト、中近東の範囲で捉えられてきましたが、仮に、この仮説が正しければ、中央アジアもその範囲に含めなければならないことになるでしょう。
 
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(続く)