時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

モーゼの兄・アーロンとは何者であるのか

 今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。イルミナティーとラビ・ユダヤ教Rabbinic Judaism or Rabbinismとの密接な関係は、アーロンとは何者であるのか、という疑問をもたらしていると言うことができます。
 
『聖書』「出エジプト記The Exodus」によると、アーロンAaronは、紀元前12・13世紀頃にヘブライ12支族が出エジプトを行った際に、その指導者となったモーゼMosesの兄とされています。モーゼは、ファラオによる迫害を恐れたその母親によって出生後まもなく葦の船に乗せられてナイル川に流され、モーゼを川から拾い上げたエジプトの王女のもとで育っておりますので、そもそも兄とされるアーロンの存在すら知らなかったのではないか、と推測することができます。この他にも、アーロンの背景については、以下の疑問点を挙げることができます。
 
1)アーロンの持つ杖は、蛇に変化する杖であることは、アーロンによる蛇崇拝を示唆させる。『聖書』「創世記The Genesis」では、イヴを騙した蛇は悪の化身であって、神によって忌まれた存在として位置付けられていることを踏まえると、アーロンの蛇崇拝は、むしろアンチ・ヘブライズムである。

2)モーゼが、シナイ山に登って「モーゼの十戒The Ten Commandments」を授けられている間、アーロンは「黄金の牛」崇拝をヘブライ12支族に広めていた。マルクート(モロコ)神の頭部は、牛の頭とされていることを踏まえると、アーロンはマルクート(モロコ)教を布教していたと推測される。
 
3)レビ(ラビ)族は、アーロンの子孫であるとされているが、ラビ族は、ヘブライ12支族に含まれていない。また、土地の所有も認められていない。
 
このような不審点から、マックス・ウェバーが、『古代ユダヤ教』において、「「レビ」という名称はヘブライ語の語源をなにももっていない」と述べているように、レビ族は、後に形成されてきた人々であり、「旧約聖書」に改竄を加えることで、レビ族の祖のアーロンを‘モーゼの兄’として加えたのではないか、と推測することができるのです。そして、その後に加わった人々こそが、イドメア人を中心としたマルクート(モロコ)教の人々であったと考えることができるのです。
 
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(続く)