時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

本当は恐い『シェルブールの雨傘』?

今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。10月2日付本ブログにて、フランス映画の『シェルブールの雨傘Les Parapluies de Cherbourg』(1964年)は、‘ユダヤ人’の世界を描いており、主人公の女性をめぐる二人の男性、裕福な宝石商のハザール氏と自動車修理工のギイ氏が、それぞれ「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」を暗示している可能性を指摘いたしました。
 
映画では、主人公の女性、ジュヌヴィエーヴは、ギイとの間に娘のフランソワーズを儲けながら、ハザール氏と結婚するのですが、フランソワーズという名前が、ジュヌヴィエーヴを演じたカトリーヌ・ドヌーブCatherine Deneuve19431022 -)の姉であるフランソワーズ・ドルレアックFrançoise Dorléac, 1942321 - 1967626日)と同じである点を踏まえますと、以下の点から怖い推理が導かれてまいります。
 

フランソワーズ・ドルレアックは、クリスチャン・ディオールのモデルを務めるなど、ドヌーブと同様に美人女優として知られておりましたが、スターダムにあがる途上の25歳の若さで、交通事故で亡くなっております。Wikipedia(英語版)によりますと、「彼女は、ニース空港に向かう途中であり、飛行機に乗り遅れることを心配していた。(事故を起こして)彼女は、車外に出ようと懸命にもがいていたが、車のドアが開かなかった。She had been en route to Nice airport and was afraid of missing herflight. She was seen struggling to get out of the car, but was unable to openthe door.」そうで、パスポートによって身元確認がかろうじてできるほどの凄惨な焼死であったそうです。

 
車のドアが開かなかった理由は不明ですが、あるいは、車の不整備が原因であったとも考えられます。車への細工が暗殺手段の常套手段の一つであることを踏まえますと、フランソワーズ・ドルレアックは、暗殺された可能性があると言えるのです。
 
そして、『シェルブールの雨傘Les Parapluies de Cherbourg』のギイは、なぜか、車の整備工であると設定されている点は、注目されます。映画のラストは、ジュヌヴィエーヴと娘のフランソワーズの二人が乗る車が、給油のため、偶然、ギイの経営するガソリンスタンドに立ち寄り、そこで、二人は再会することになるのですが、互いによい家庭を持ったことを確認しあった後(ギイは別の女性と結婚しており、フランソワという男児がある)、ガソリンを満タンにしたジュヌヴィエーヴと娘のフランソワーズの二人が乗る車が走り去り、ギイは大喜びではしゃぎまわるというシーンです。
 
一見、ハッピーエンドのように見えるのですが、映画の公開から3年後のドヌーブの姉のフランソワーズの交通事故による焼死は、別のエンドを示唆しているような気がいたします。すなわち、映画のラストシーンは、ギイによって車には細工がされており、走り去った車が事故を起こしてジュヌヴィエーヴとフランソワーズが焼死することを暗示しているのかもしれないのです。ギイは、暗殺計画の成功を確信して、はしゃいでいたということになるでしょう。
 

映画において、ギイが車の整備工という設定となっていることには意味があり、映画は、「黒いユダヤ人」による暗殺の恐怖を描くものであったと推測することができるのです。


 

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(続く)