時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ゴヤの『巨人』の巨人はイルミナティーか

 今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。18・19世紀のスペインの画家ゴヤFrancisco José de Goya y Lucientes1746330 - 1828416日)の作品に『巨人The Colossus』という名画があります(弟子のアセンシオ・フリア・アルバラシンAsensio Julià i Alvarracín1760118 - 1832222日)の作とする説もありますが、私見といたしましては、逃げ惑う群衆を細かに描く表現法から、やはりゴヤの作品である気がいたします)。
 
スペイン語では『エル・コロソ』のほか『エル・ヒガンデ(巨人)』『エル・パニコ(恐怖)』『ラ・トルメンタ(嵐)』の名でも知られているそうですが、スペインからピレネー山脈をまさに越えてゆこうとしている野生的で、攻撃的な姿勢をとる裸体の巨人の斜め後ろ姿を、スペイン側から描いた作品であり、ゴヤの生きた時代を表現した作品である、と一般的に解釈されております。
 

では、この巨人は、何を象徴しているのでしょうか。スペインであるとする説がありますが、新大陸の発見やマゼランの世界周航によって、16世紀の大航海時代には、「日の沈むところのない帝国」と称されたスペインでしたが、当時のスペインは、新大陸からもたらされた大量の希少金属による貨幣価値の下落によるインフレの発生、英蘭などの新教国の興隆、英国を相手とした1588年のアルマダの海戦における敗戦、そして、半島戦争Peninsular War1808- 1814年)における疲弊を通し、19世紀前半にはその地位を完全に追われ、停滞と斜陽の時代にありました。従いまして、ゴヤが、今まさに、ピレネー山脈を越えてヨーロッパ中央部に襲いかかろうとしている巨人に、スペインを喩えたとは考えられ得ないのです。

 
また、巨人は、半島戦争においてフランスのナポレオン軍に抵抗するスペイン軍であるとする説もありますが、画面手前のスペイン側には、逃げ惑う多くの人々の姿が描かれておりますので、仮に、この説が正しければ、ゴヤは、巨人が向かう方向を、ピレネー山脈の向こうのヨーロッパ中央部ではなく、その逆のスペイン側にして描いたはずです。巨人が闘うべき“敵”は、スペイン側に居るのですから。
 
そこで、①野生的で暴力的な風貌、②フランシスコ派を想起させる裸体、③バスク地方を想起させるピレネー山脈、④『二都物語』の登場人物で、フランス革命を先導するカルマニョールの外国人を想起させる巨人の褐色の膚と漆黒の黒髪、⑤ゴヤの別の作品に『巨人The Giant)』または『巨人(The Colossus)』と呼ばれる作品があり、月を背景に座る巨人の姿が描かれている点から勘案いたしますと、巨人は、セファルディ系ユダヤ人のバスク人を象徴しているとは、考えられないでしょうか。すなわち、スペインを破壊しつくし、今度は、ヨーロッパ中央部へと向かおうとしているイルミナティーの姿ではないか、と推測することができるのです。一部の専門家は、巨人が目を閉じているように見えるのは、盲目な暴力思考を表現した可能性があると指摘しておりますが、あるいは、ゴヤは、巨人がイルミナティーであることを示唆させるために、敢えて巨人の目をイルミナティーのシンボルマークである片目に描いたのかもしれません。
 

イルミナティーは、その結成にともない、活動の中心をスペインやポルトガルではなく、中央ヨーロッパ諸国や英国に移したようであり、狙いをこうした地域に定めたイルミナティーの姿が、巨人に象徴されているのではないでしょうか。


 

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(続く)