時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

物価上昇局面での増税は致命的

 財政再建は誰もが認識している重要課題なのですが、具体的な再建方法となりますと、すぐさま増税論が登場してくることになります。しかしながら、日本国が物価上昇局面にあることを配慮しますと、増税は、日本経済の痛手となるかもしれないのです。

 市場経済にあっては、課税システムは、経済活動そのものに組み込まれています。このため、増税は、企業や消費者の負担増をストレートに意味しますし、購買力の民から官への移転という側面も持つことになるのです。政府が安易に増税しますと、民間の消費活動が停滞し、企業の収益も減少し、かつ、それがまた消費活動を冷え込ませるという、負のスパイラルを起こすかもしれません。経済が活況を呈している場合には、こうした事態が発生する可能性は高くはありませんが、不景気の時や物価が上昇している場合には、景気後退のリスクが高まりまることになります。ゼロ・サムではない市場経済のメカニズムを考えますと、市場経済における増税は、必ずしも歳入増を約束していないのです。

 このように考えますと、財政再建の方法の中で、最も弊害の少ない方法は、やはり、歳出削減と行財政改革の徹底しかないのではないか、と思うのです。