時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国はチベット救済の旗手に

 旧ユーゴスラヴィア紛争において、”民族クレンジング”と呼ばれた虐殺が発生した時、欧米諸国は、国連決議なくしてNATO軍の派遣を決定し、人道的介入を行いました。その後も、ヨーロッパ内部における同様の事態の発生に備えて、EUは、安全保障分野における機構改革に乗り出すのです。

 以上の経緯から読み取れることは、虐殺といった非人道的な行為を許さず、地域協力の下で解決に乗り出そうとする欧米諸国の強い姿勢です。翻って、チベットで起きた痛ましい弾圧事件の対応について、アジア諸国を顧みますと、残念なことに、どの国も、中国の虐殺を厳しく非難し、この事態に地域を挙げて対処しようとする姿勢も動きも見えてきません。アジアでは、力ずくでの虐殺阻止する方法も手段も持っていないのです。

 日本国が、もし、アジア諸国にとって頼りになるリーダーになろうと志すならば、本来、アジア諸国に呼びかけて、この事件に対する対処を協議すべきであると言えましょう。非難決議の採択でも、北京オリンピックのボイコットに関する協議でも構いません。21世紀のアジアが、前近代的華夷秩序に飲み込まれないためには、今こそ、日本国は、チベット救済の旗手になるべく名乗りを上げるべきなのではないか、と思うのです。