時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

石原都知事の移民法改正論への疑問

 本日、産経新聞の朝刊一面に、石原都知事が、移民法改正についての記事を書いておられました。どのような内容かと拝読しましたところ、移民受け入れ賛成論が展開されておりました。日本国の歴史を振り返りますに、氏の論理には、いささか無理があるように思うのです。

 氏が移民受け入れ拡大を主張する根拠は、要約しますと、日本人とは、古代にあって、様々な周辺の地域から到来した民族が融合したものであるから、現在でも同様に、移民を迎え入れても問題はない、というものです。しかしながら、この主張には、2000年という時間が抜けております。時間軸で見ますと、人類とは、分化あるいは多様化傾向にあると思うのです。世界各地の諸民族が、今日のような多様な文化を築いてきたのは、実は、千年単位の時間の経過があってこそと言えそうです。比較的歴史の浅いと言われるアメリカでも、旧宗主国のイギリスとは、相当に異なる文化や国民性を育んでいます。民族や国民とは、時間が作り出したもの、とも言えるかもしれません。

 この民族形成の側面を考えますと、2000年前に融合したから現在でも無問題なはず、という氏の議論には、いささか疑問を感じるのです。しかも、現代という時代には、国家が成立していますので、移民となって来日する人々には本国もあれば、自民族への愛着もあるはずなのです。DNAのレベルの共通性は、必ずしも、文化や精神性をともにする民族の共通性とは言えず、やはり、移民を増加させれば、ヨーロッパ諸国と同様に、社会問題を抱えることは避けられないと考えるのです。