時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チベット弾圧は中国憲法にも違反している

 中国政府によるチベット弾圧のニュースは世界を駆け巡り、各国で、この非人道的な行為に対する非難と義憤を巻き起こしています。ところで、中国は、チベットを自国の自治区と一方的に見なしているようですが、仮に、その立場に立つとしても、これまでのチベット政策は、中国憲法に違反しているのではないか、と思うのです。

 中国は、憲法において人民と民族を区別して扱っていますが、第2条において抽象的な人民に言及した上で、第4条で、諸民族の地位を定めています。全文を記載しますと、

中華人民共和国の各民族は、一律に平等である。国家は、各少数民族の合法的な権利および利益を保障し、各民族の平等、団結、互助関係を維持・保護し、発展させる。いかなる民族に対する差別および圧迫も禁止し、民族の団結を破壊し、または民族の分裂を生み出すような行為は、禁止する。
 
 国家は、各少数民族の特性および必要に基づき、各少数民族地区の経済および文化の発展が速まるように援助する。

 各少数民族が集住する地域は、区域自治を実施し、自治機関を設立し、自治権を行使する。各民族自治地域はすべて中華人民共和国の不可分の一部である。

 各民族はすべて自己の言語、文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗・慣習を保持し、あるいは改革する自由を有する。」

 とあります。不可分の一部という表現はひっかかりますが、たとえ、中国政府が、チベット自治区とする立場であるにしても、チベットへの漢民族の移住を促進し、住民自治を妨げ、チベット民族を迫害してきた行為は、この憲法の条文に明確に違反します。中国政府が、この条文を踏みにじるとしますと、やはり、中国は、法治国家ではなく、前近代的な国家であると見なさざるを得ないことになりましょう。