時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チベットには独立国家の資格がある

 民族自決の権利は、そもそもが既存の国家の枠組みへの不承認を含んでおり、コソボの独立宣言の時にも、民族独立紛争が各地に拡散することが懸念されました。チベット問題にあっても、敢えて不安定化を強調することによって、チベットの独立や自治に対して異論が唱えられるむきもあります。しかしながら、チベットに関しては、この見解は当たらないと思うのです。

 それは、チベットが、1951年の中国による占領と併合の以前にあって、国際法で認められた国家の要件を既に満たしていたからです。8世紀以来、歴史の荒波に翻弄されつつも、チベットには、統治を担う政府があり、チベット族という国民があり、そうして、固有の領土がありました。そうして、かのヒマラヤの麓の地で、チベット仏教に基づく独自の文化と社会を築いてきたのです。この意味において、ユダヤ人の国家喪失が2000年以上を遡るパレスチナ問題や、ビザンチン帝国さえからむコソボ問題や、18世紀のロシア帝国拡大により併合されたチェチェン共和国よりも、チベットは、はるかに独立国家としての立場が揺るぎないのです。しかも、中国によるチベット領有は、「17条協定」という国際条約に基づくものであり、この協定の無効や破棄が確定すれば、主権国家に返り咲くことは当然の成り行きとなるのです。

 以上のチベットの状況を考えますと、まずは、主権を回復し、中国と対等のな立場に立った上で、その後の国家体制は選択すればよいのではないか、と思うのです。中国によるチベット併合は侵略行為ですので、国際社会は、チベットの独立を応援すべく、ダライ・ラマ14世と中国政府との交渉の場を作るよう努力すべきと言えましょう。

 よろしければ、クリックをお願いいたします。
<A HREF="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</A>