時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

多文化共存と移民問題

 文化とは、人一人で作れるものではなく、歴史という長い年月をかけて集団の中で自然に醸成されてきたものです。もちろん、その時代の文化をリードしたり、刺激を与えた才能ある個人もおりましたけれども、それを深く理解し、呼応する多数の人々がいたからこそ、それは、文化として残ることになったのです。こうして、それぞれの国には、多様な文化が生まれ、今日まで伝えられることになりました。この側面は、文化のみならず、国民性や社会にも当て嵌めることができます。

 文化と集団との関係を説明するには、個人主義では限界があるのですが、その一方で、戦後の潮流は、個人の自由と権利を広く認める方向へと向かい、それは、個人の移動の自由を促進する働きをしました。その結果、各国とも、移民の占める人口が増加し、多民族化に対応するかのように、多文化共存が唱えられるようになったのです。しかもそれは、国際社会における国家間の文化の共存ではなく、国家内部における多文化共存を主張するまで発展することになったのです。

 はたして、個々ばらばらの人々が、文化を持ち寄ることによって、人類の多様な文化は守られるのでしょうか?それは、もはや生きた文化ではなく、断片の寄せ集めに過ぎず、それがさらに進みますと、やがて、文化としての個性を失坩堝の中で溶けて消えてしまうかもしれません。結局、人類は、文化の多様性を失うのです。

 最近の政府や有識者の政策を見てみますと、自国の文化や社会がやがて消え去ることに気付かず、また、国民に対して対して受け入れの承諾を求めるでもなく、流行に流されるかの如く移民拡大政策を進めているようです。日本国のみならず、国際社会のすべての諸国が、一度ここで立ち止まり、この問題について真剣に議論すべきではないか、と思うのです。消えてしまったものを、もとに戻すことは極めて難しいのですから。

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