時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『天皇』の統合力と多民族国家化

 18世紀に建国されたアメリカでは、オバマ大統領の就任が、多民族国家であり、かつ、人種差別が社会問題となってきたアメリカの統合を意味するとして、人々の関心を集めています。一方、建国から2600年以上を経た日本国では、古来、天皇が、日本国を緩やかな形で統合する役割を果たしてきました。国生み神話にも見られますように、日本国の誕生と皇祖神とは観念において不可分に結びついており、天皇は、時代を超えて、日本国、および、日本国民の安寧と繁栄を天神地祇に祈ってこられたのです。

 それでは、もし、開かれた皇室が極まり、外国人でも天皇の配偶者になれるようになったとしましたら、どのようなことが予測できるのでしょうか。在日外国人や移民が増加している現状にあって、天皇に外国人の血が流れることに、賛成の意見を述べる人も少なくないかもしれません。もしかしますと、アメリカのように、天皇において、様々な人種や民族が癒合することこそ、日本国の統合とする主張も登場するかもしれません。さらには、諸外国の事例を引いて、王族では外国人との婚姻の方がより一般的であり、国家間の友好親善に貢献するという意見も聞かれることでしょう。しかしながら、その一方で、この融合政策には、重大な問題点があることもまた確かです。それは、先祖代々の日本人からみますと、天皇は、もはや、自らの統合の象徴ではなくなる、ということです。もしかしますと、多数の日本人の心が、反対に天皇から離れていってしまう可能性も否定はできません。あるいは、しばしば王家の婚姻が、継承戦争など多くの国際紛争を招いてきましたように、民族間で、感情的な対立やしこりを残すことも考えられます(外国人の配偶者を持つことが、その出身国の属国化を意味する場合もあった・・・)。

 もし、天皇をもって、多民族の融合を図ろうとしますならば、日本国内の全ての民族との婚姻を行う必要があり、何百年たっても融合しきれるものでもありません。日本国の歴史的成り立ちを考慮しますと、皇祖神の血統をひく日本国の最高祭祀者の家系として維持した方が、天皇の伝統に裏打ちされた統合力は保たれるのではないか、と思うのです。

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