時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

東アジア共同体―誰がメンバーシップを決めるのか?

 岡田外務大臣は、東アジア共同体構想に関連して、アメリカを排除する旨の発言を行ったと報じられています。この問題、実のところ、日本国にメンバーシップを決める権限があるのか、ということから議論しなければならないと思うのです。

 地域共同体の先例として、しばしばEUが取り上げられていますが、前身であるEECは、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの六カ国から始まり、漸次的にメンバーシップを拡大してゆきました(現在は、27か国)。最初のスタイルは関税同盟であり(相互の関税撤廃と共通関税の導入)、加盟国相互の貿易促進が目的とされ、六カ国の自発的な合意によって結成されています。その後、周辺諸国の加盟申請に基づいて新たなメンバーを受け入れ、東西冷戦の終焉後は、バルト三国や中東欧諸国の加盟も実現しました。旧社会・共産主義国に拡大するに際しては、経済的な条件のみならず、民主主義、基本的な自由と権利の尊重、法の支配といった政治的な価値観も加盟条件として設定されています。また、NATOEUのメンバーはおよそ一致しており、集団的安全保障の枠組みと経済圏との間に深刻な乖離がありません。

 翻って、東アジア共同体を見てみますと、経済的な目的からすれば、アジア諸国と経済関係を持つアメリカを排除する理由はなく、政治的にも、同盟国であるアメリカの方が日本国と価値観を共有していますし、安全保障の枠組みとも一致します。にもかかわらず、日本側から一方的にアメリカを排除すると宣言するとなりますと、合理的な理由がないのですから、これは、穏やかなことではありません。また、メンバーシップの決め方自体が定まっていないにもかかわらず、日本国が、最初から、特定の国を排除する方法にも疑問があります(構想の発案国には、メンバーを決める権限がある?)。東アジア共同体構想は、メンバーシップの決め方を議論する時点で、日米関係や国際社会に摩擦や亀裂を生むのではないかと思うのです。

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