時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

子供手当は公平で持続性があるのか?

 公的年金制度については、誰もが退職後の生活を心配しますので、制度設計や改革案については、受益と負担の関係や世代間の公平性の観点から、うるさく議論するものです。ところが、子供手当については、一人当たり定額と割り切っており、誰も、制度の公平性や持続性について論じようとしないのです。

 新聞報道によりますと、子供手当の予算は、全額支給となりますと5兆を超えるそうです。この額は、予算の8分の1ほどに当たり、防衛費を越えますので、財源の確保が容易ではないことは明らかです。もし、持続的にこの制度を継続させるとしますと、財政の”むだ”を省いたとしても、額が額ですので増税は必至となりましょう。しかも、受益と負担のバランスに関しては、子供のいない世帯と高校生以上の子供を持つ世帯には、負担だけ課せられ、受益は一切ありません。子供手当を受け取って育った子供たちも、将来において、高い税負担が待っています。つまり、現状の制度設計では、現時点で中学生以下の子供を持つ世帯だけが、最大の恩恵を受けることになるのです。親の世代が、自己の恩恵のみを考えて、将来に負担が移転される政策に安易に合意しますと、成人した子供たちにそれを背負わせることになります。また、子供手当の結果、日本人家庭であれ外国人家庭であれ、出生率が上がりますと、当然に支出の方も増え、予算をさらに圧迫します。また、子供手当に期待して出産したところ、予算の目途が立たなくなり手当が廃止となれば、これもまた、梯子をはずされたことになるでしょう。

 大規模な予算を要する制度を設けるときには、長期的な視点に立った制度設計を要するものです。子供手当の導入については、抜本的な見直しをも含め、議論を尽くしてからでも遅くはないと思うのです。

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