時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

尖閣諸島棚上げ論は中国の武力行使を招く

 尖閣諸島の棚上げ論について、野中広務氏が中国で言及したことから、ネット上でも、棚上げ論はあった、とする意見が散見されるようになりました。

 仮にそのような合意が存在したとしたら、一体、何を根拠として、当事の日本国政府は、中国側の言い分を認めたと言うのでしょうか。尖閣諸島については、1895年に沖縄に編入しており、その後は、鰹節工場が建てられるなど、日本人の手によって開拓されています。台湾と中国が領有権を主張するに至るまでの75年間、尖閣諸島は、平穏無事に島は運営されているのです。沖縄編入は、下関条約の直前となり、この点、明治政府も清国の反応を気にしていますが、編入に先だって、10年間も無主地の調査を実施しています。サンフランシスコ講和条約により、沖縄はアメリカの信託統治となりますが、同条約には、尖閣諸島に関する規定は見られません。田中首相周恩来総理との会談内容の記録には、”尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。”とする発言が残されておりますが、この発言は、中国側の一方的な見解が述べられているに過ぎません。しかも、はっきりと、石油が目当てと明言しているのです。中国側には根拠がないのですから、日本国政府が、棚上げに合意するはずはないのです。実際に、政府の公式見解に変更は見られません。

 左派の平和主義者ほど、棚上げの存在を主張していますが、棚上げを認めれば、中国の武力行使の垣根を低くすることが、分かっているのでしょうか。分かっているとしますと、平和主義は、国民を騙す仮面であったことになります。

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