時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

トロイの木馬フェニキアの大型木造船説 The Wooden Horse of Troy was a Phoenician Large Wooden Ship for Ocean Navigation

 今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。これまでたびたび本ブログにて、日本国の統合が完成にいたるまでの経緯をお話しさせていただいておりましたが、このテーマについて研究すればするほど、内容に矛盾が生じてしまい、ブログで発表する前に、もっときちんと研究を進めなければならないという気持ちが強くなりました。現在、研究を進めて原稿の執筆中であり、いずれ何らかの形で発表させていただきたいと考えております。

 そこで、本ブログにおけるテーマを変更させていただき、古代世界史に目を向けてみましょう。案外、古代世界史は日本史とつながっているのです。2012年9月に、私のブログ、『歴史問わずがたり』( http://blogs.yahoo.co.jp/nihonshinoiratsume/)にて、「トロイの木馬」とは、フェニキア人が船の船首に馬の飾りを付けるという慣習を有していたことによって生じた伝説ではないのか、という「トロイの木馬フェニキアの船説」を唱えさせていただきました。

 「トロイの木馬」とは、遠洋航海用の大型船、もしくは、遠洋航海船の造船技術を応用してつくった攻城器ではないか、と言う推測です。「トロイの木馬フェニキアの船説」を補強する材料として、以下の点を指摘することができます。


 1)フェニキア人は、レバノン杉の交易に従事していた人々であり、すぐれた木造建設技術を有していました。『聖書』によりますと、壮麗を極めたという巨大なソロモン第一神殿は、フェニキア人の建築家・ヒラムによってつくられています。古代にあって、トロイの木馬のような大型木造建造物は、フェニキア人の手によって、はじめて造ることができたのではないでしょうか。メソポタミア文明エジプト文明の遺跡群が示しますように、古代にあっても、レンガづくりや石造りで大きな建物を建築することはできましたが、大型木造建築といいますと話は別なのです。

 2)フェニキア人は、遠洋航海の可能な大きな半円形の船底を持つ大型船の建造技術を有しています。「トロイの木馬」のような、多数の兵士を収納できる木造建造物は、フェニキアの大型船の船底を想起させます。大型船の建造は、フェニキア人の得意とするところであり、「トロイの木馬」はおそらく大型船を陸上に造ったような形をしていたと考えられるのです。

 3)トロイは、紀元前1200年頃というその滅亡年代がほぼ同年であることから、ヒッタイト帝国のことではないか、とする有力な説があります。ヒッタイト帝国の滅亡が、トロイの滅亡として伝説化されたのではないか、ということです。ヒッタイトは、「海の民」によって滅ぼされたといいます。「海の民」については諸説があり、謎とされていますが、フェニキア人である可能性は大いにあります。海上交易に携わるフェニキア人は、まさに‘海の民’なのです。

 このような点から、トロイの木馬は、遠洋航海用の大型船、もしくは、遠洋航海船の造船技術を応用してつくった攻城器ではないか、という仮説が導かれてくるのです。では、この仮説が正しいのであるならば、‘「トロイの木馬」によってトロイが滅んだ’という伝説は、いったいどのような歴史的事件を含意しているのでしょうか。


(次回に続く)