時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

‘領有権問題’とかかわる『日本書紀』の信憑性

 今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。今回のテーマは、日本書紀偽書説への反論です。なぜ、日本書紀偽書説に対して反論する必要があるのかと申しますと、我が国現存最古の官撰の史書である『日本書紀』の史書としての信憑性の問題は、昨今、とみに厳しさを増している‘領有権問題’とかかわってくるからです。

 竹島問題が、我が国にとりまして極めて深刻な問題であることは、韓国側による軍事占領と島上で行われた軍事訓練によって明らかです。竹島という日本国領を武力占領して、島内において、勝手に、日本人を敵と見なした軍事訓練(殺傷訓練)を行う韓国政府の行為は、不気味であり、日本側といたしましては、許しがたいものがあります。

 竹島問題は、国際司法裁判所に付託、審理されますと、日本側が勝訴するとされています。その理由は、竹島が日本固有の領土であることを示す歴史資料がきちんと存在しているからです。固有の領土であることを証明するにあたっては、歴史資料は、大きな役割を果たしてくれるのです。

 このように、歴史資料は、固有の領土の証明において大事なのですが、竹島のみならず、対馬をめぐっても、韓国側は李承晩ラインなるものを勝手に宣言しており、対馬の領有をも狙っているようです。しかし、対馬に関しましては、竹島よりも、もっとはっきりと日本固有の領土であることを示す歴史資料が数多くあります。その一つが『日本書紀』です。記紀神話をはじめとして、対馬は日本固有の領土であることは、『日本書紀』において明示されているのです。
 

 しかし、このように領有権問題が、歴史書とかかわってくるとなりますと、韓国側は、その歴史書の信憑性を否定してくることになります。特に『日本書紀』は、現実離れした歴代天皇の在位年数や享年、『古事記』との不整合など、その史書としての信憑性を否定さらかねない材料を有しています。そこで、わたくしの専門である日本書紀紀年法の構造を解説することを通しまして、これから数回にわたって、『日本書紀』が偽書ではないことを、説明してまいります。

(続く)