時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

NHK『ヒストリア』の捏造天照大神麻薬患者説

今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。6月4日に放送されましたNHKの『ヒストリア』という番組につきまして、妹の雅子は6月5日に本ブログにて、意見を述べておりますので、今日は、この番組を視聴された方々が、内容をお忘れにならないうちに、わたくしの意見を述べさせていただきます。
 
NHK『ヒストリア』では、女性が被葬者であることが確実視されております糸島半島の遺跡(平原方形周溝墓)から、伊勢神宮の御神体の鏡(八咫の鏡)とほぼ同じ大きさの大型の内行花文鏡を含む大量の鏡が出土したことから、「魏志倭人伝」によってよく知られる卑弥呼と日神の天照大神とを結びつけておりました。すなわち、卑弥呼がこの遺跡の被葬者であって、この遺跡から出土した太陽を象徴している大型の鏡は、伊勢神宮の御神体の鏡と同じ大きさであることから、卑弥呼は、天照大神であると言わんばかりの番組構成となっているのです。
 
確かに、糸島半島の遺跡と卑弥呼天照大神との間には、歴史的関連があるようなのですが、この番組の再現ドラマ(捏造再現ドラマ)では、卑弥呼は、麻薬をもうもうと炊き込めた神殿で、奇妙な、おどろおどろしい踊りのような神事を行っておりました。ナレーションでも、麻薬による幻覚症状が、卑弥呼の宗教的権威を支えていたと言うのです。
 
麻薬の害とは、一般的には、幻覚症状を起こすことにあるとされておりますが、多虐性、残虐性を帯びることが、麻薬の最も大きな害なのではないでしょうか。「暗殺者」を意味するassassinが、麻薬を意味するhashishに由来しておりますように、麻薬は、脳の感情の制御機能を壊して、極端な嫉妬心や敵愾心を煽ることで、他者への攻撃性を強める薬物であるようなのです。極端な嫉妬心や敵愾心による多虐行為は、当然、理性的市民社会を壊す原因ともなります。
 
したがいまして、NHK『ヒストリア』は、我が国の最高神天照大神は、残虐性・多虐性の麻薬患者であると言っているようなものであり、天照大神を冒涜する捏造説を喧伝しているということになるでしょう。
 
天照大神は、記紀神話によって、我が国の最高神としても位置付けられている大事な神様です。天照大神が、伊勢をその神宮を立てるにふさわしい場所として選んだのは、風光明媚な場所であるからです。伊勢神宮の創建の由来を記しました『儀式帳』には、天照大神の言葉として、以下の一文が見えます。
 
浪の音きこえぬ国
風の音きこえぬ国
弓矢鞆の音きこえぬ国
大みこころ鎮まる国
 
 
(続く)
 
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