時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国政府はrequisition(徴用)の強調を

 先日、ボンで開かれていたユネスコ世界遺産委員会での日本国側の陳述が、河野談話の二の舞になるのでは、とする懸念が広がっております。英文では、”forced to work”と表現されたため、韓国政府のみならず、海外メディア等でも、”日本国政府が強制労働を認めた”と解釈されたからです。

 歴史とは、政治的妥協で決めてはならない性質のものですので、陳述の場を設けたこと自体が誤りなのですが、報道によりますと、”forced to work”は、1930年に成立したILO第29号条約(「強制労働に関する条約」)における表現である”forced labor”と同一視されないための苦肉の策であったようです。しかしながら、表現が似通っているため、韓国側に政治的に利用される余地を与えてしまったことは否めません。ILO第29号条約は、成立が1930年ですので、日本国政府が、”強制労働”を認めたとなりますと、国際法違反を問われることにもなりねないからです(謝罪と賠償の根拠に…)。もっとも、当条約では、戦争に際しての徴兵や徴用は”強制労働”には当たらない、としています。ユネスコでの日本国政府の陳述にも、文末ながらも”the Government of Japan also implemented its policy of requisition”と述べており、requisition(徴用)であったことを説明しており、この点を強調しないことには、史実を正確に伝えることはできません。日本国政府は、この件について、急ぎ、”強制労働”や”奴隷”と報じた海外メディアに対して、通常の徴用であることを申し入れ、訂正を求めると共に、各国政府にも丁寧に説明すべきです。

 それにいたしましても、韓国では、日本国に”強制労働”を認めさせた外交的勝利と見なしているそうですが、それ以前の問題として、史実を追求しようとはしないのでしょうか。”歴史は政治が造るもの”と考えているのでしょうが(政治力によって無実の罪を着せることができる…)、日本国民の多くが、賠償を得るために、史実を曲げてまで日本国を犯罪国家に仕立て上げようとする韓国に対して怒りを覚えていることを理解すべきではないかと思うのです。

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