時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

南シナ海問題の焦点ずらし―本質は中国の違法行為

 南シナ海における中国の一方的な人工島の建設と領海宣言は、アメリカによるイージス艦ラッセルの派遣という事態に発展しました。この一連の流れに対して、ネット上では、”米中対立構図”を印象付ける見解が散見されます。しかしながら、この見解、焦点を巧妙にずらしているのではないかと思うのです。

 南シナ海での問題を、米中二国間の問題に矮小化する見方は、中国寄りの立場からの発信と推測されます。中国政府もまた、自国の問題にアメリカが不当に介入したことが、あたかも問題の核心であるかのように批判しています。しかしながら、この問題の本質は、中国が、国連海洋法条約に違反する行為を強行したことにあります。中国側は、アメリカの強硬姿勢を強調し、”被害者”を装っていますが、この問題の根本的な原因は、既成事実化を目論んだ中国の違法行為にあることは疑いなきことです。中国の行動は、いわば、公共の場を囲い込んで私物化し、他の人々の自由な行き来を妨害するようなものなのです。しかも、軍事基地として使用するとなりますと、周辺諸国の、そして、海洋秩序全体の安全が脅かされることは言うまでもないことです。

 一度、国際法に反する行為を認めますと、法の支配が崩壊し、国際社会は暴力と野蛮が支配する無法状態へと転落します。焦点ずらしの論調に惑わされてはならず、中国の違法性こそ、批判されるべきと思うのです。

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