時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『China 2049』と『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国の『兵法三十六計』の脅威(パート5)

 今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。今回も、昨今、反響を呼んでおります『China 2049』に関連して、『吉備大臣入唐絵巻』から見えてくる中国問題を扱います。
 
 12月4日ならびに8日付本ブログにて、マイケル・ピルズベリー氏が、その著書の「中国の夢」というタイトルのその第1章を「天無二日 土無二王」という言葉ではじめており、この言葉の意味する考えを肯定するメンタリティーを持つ人々の問題について扱いましたが、この言葉が、現在の世界情勢を分析するキーワードとなる理由として、以下の点も指摘することができます。
 
 それは、人類にとっての理想の世界が、‘すべての国々が、「天無二日 土無二王」という考えを持っていない世界’であることと、現実との矛盾です。
 
現在の国際社会は、「自らが覇者となるためには、他者を攻撃してもよい」、とする‘悪い考え’を持っている国は、やがて地球上には存在しなくなるであろうということを想定しております。この目的のために、様々な国際法、条約、制度を整え、国際協調主義を基軸とする世界を構築してきているのです。
 
換言いたしますと、これらの国際法、条約、制度に違反する国は、‘悪い国’であって、国際社会から制裁などを課されることによって、‘悪い国’は反省し、更正することを通して、‘良い国’となり、やがて、世界には、‘悪い国’は、存在しなくなるであろう、ということです。世界のすべての国々は、自らが覇者となるために、一方的に、他国を攻撃しなくなり、国際協調を貴ぶことになるわけですので、人類は、極めて平和的な世界を築くことができるわけです。
 
 ところが、ここで、問題となりますのは、「はたして、‘悪い国’は、国際社会から制裁などを課されることによって、本当に反省して、更正することを通して、‘良い国’となるのであろうか」という点です。
 
 進化論との関連で、地球上には、「神様志向型人類god(goddess)-minded human」と「野獣型人類 beast human」が併存しており、2種類の人類を分ける基準は、善悪を判断する能力の有無にある点につきましては、本ブログにて、再三にわたって指摘させていただいております。この問題は、悪い国の更正問題とも密接に結びていております。
 
『吉備大臣入唐絵巻』におきましても、「野馬台詩」を吉備大臣に読まれてしまった中国は、吉備大臣を日本へ帰国させざるを得ない状況となりますが、反省している素振りは見られません(ただし、絵巻の吉備大臣のモデルとなった吉備真備の時代に、唐王朝におきまして、安禄山の乱が発生し、中国は混乱状態に陥り、諸国分裂時代を迎えることになります)。絵巻に登場する中国王朝が反省していない点にも示されますように、仮に、進化の過程で、善悪の判断能力に欠けた人類が、生じてしまっているのでありましたならば、‘悪い国’は、本当に更正するのか否かの問題は、深刻であるようなのです。

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(続く)