時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国の無法国家宣言-平和憲法の空文化

  昨日、北京で開催された中国共産党創設95周年の祝賀大会で、習近平国家主席は、「我々は正統な権益を決して放棄しない」と述べ、改めて今月12日に予定されている仲裁裁判の決定に従わない意向を内外に示しました。この発言は、”中国無法国家宣言”と言っても過言ではありません。

 仲裁裁判の決定に従わない、という行為の重大性は、国内司法制度に当て嵌めてみますとよく理解できます。国家レベルでは、裁判所の判決に対する拒絶は許されず、たとえ抵抗しても、強制執行される結末を迎えます。そして、人々は、不服従を表明した人物を、法秩序に従わない”無法者”と見なすことでしょう。国際社会においては、国家レベルほどには司法制度が整ってはいないものの、司法判断に対する拒絶行為の重大性は変わりはないのです。同時に、紛争の解決を平和的手段に委ねず、あくまでも、軍事力で現状を変更しようとする中国の態度は、”平和憲法”と称されている日本国憲法の前提を崩壊させてもいます。日本国憲法の前文では、周辺諸国は全て平和を愛する友好的な国々であると想定しているのですから。この前提の崩壊は、”九条信者”と呼ばれる人々にとっては、致命的な意味を持つはずです。

 果たして、日本国に平和をもたらしてきたのは憲法第9条であると主張する人々は、中国の無法国家宣言をどのように説明するのでしょうか。参議院議員選挙に向けて、安保関連法の整備に否定的な主張も目立ちますが、仕掛けられた戦争に対してどのように対応するのか、国民に説明する責任があるのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。