時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

皇室の行方と日本国の選択肢

 今月8日に報じられた天皇陛下のお気持ち表明は、中国や韓国等の評価が明らかになるにつれ、どこか、危ない雰囲気を漂わせるようになりました。背後に、内外の政治勢力による思惑が察せられるからです。

 ところで、皇室をめぐる危うさが表面化している今日にあっては、整理された議論こそ、危機からの脱出の道かもしれません。そこで、本日は、凡そ、天皇の役割と日本国の選択肢について提起してみたいと思います。

 第一の天皇の姿は、江戸時代以前に遡る祭政二元制度における伝統祭祀への回帰です。大化の改新建武の親政等を除いて、凡そ、天皇は国家祭祀を司り、日本国の安寧を祈ってまいりました。問題点は、神道を基調とする国家祭祀に対して、他の伝統宗教創価学会等の新興宗教から反対を受ける可能性があることです。

 第二の天皇の姿は、明治期の統治者としての天皇の役割です。明治天皇もまた、実際には、”君臨すれども統治せず”であったようですが、立憲君主制における元首の立場であり、自民党等の憲法改正案にも示されおります。この方向性における問題点としては、19世紀とは時代状況も違う上に、世襲元首に統治権を与えることは今日にあっては民主主義に反すること、並びに、国民の合意を得ることが難しいこと等を挙げることができます(明治維新薩長等の討幕派が主導しましたので、国民が自発的に希望した天皇像でもない…)。

 なお、保守系と総称されではいますが、第一と第二の立場における復古の方向性は、180度違っています。

 第三の天皇の役割は、今日の象徴天皇をそのまま維持することです。この方針は、今般のお気持ち表明に込められいるように思われます。しかしながら、現状維持にも問題がないわけではなく、次期天皇に同様の役割を期待することは難しく、今般懸念されているように、内外勢力の傀儡となる可能性も否定はできません。

 そして、第四の選択肢があるとすれば、それは、天皇を政治のみならず、国制からも完全に切り離し、共和制を選択することです(三種の神器を象徴にしても良い…)。世界最古を誇るものの、血統や婚姻に関する問題によって民心の離反を招き、統合とは逆に国家分裂や属国化の原因となるのであれば、共和制の選択も排除はできません。

 皇室の周辺にまつわる問題が明るみされた以上、議論もまた、あらゆる選択肢を含めてオープンに行うべきです。今日では、皇室を覆う”菊のカーテン”と秘密は国家的なリスクでもありますので、マスコミ等の情報に惑わされ、努々、誘導されてはならないと思うのです。

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