時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国連(UN)の機能不全問題には計画性があるのか

 今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。去る7月26日付本ブログにおきまして、「常設仲裁裁判所によって蘇ったニコライⅡ世の亡霊」と題しまして、『聖書』「暴露録(黙示録)」に登場するサタンの化身、「赤い竜the red dragon」とも目される中華人民共和国の暴力主義による領土拡大政策に対しまして、常設仲裁裁判所the Permanent Court of Arbitrationが、‘国際法に違反する’とする判決を下したことについて扱いました。その際に、「いずれかの国からの提訴があって、開廷されていない場合、常設仲裁裁判所は、閑散としており、あたかも‘幽霊屋敷’のようであるかもしれません」と記述したのですが、昨今、調べましたところ、常設仲裁裁判所が受理している案件は、相当数に上っているようです。すなわち、閑散としているどころではないようなのです。それでは、なぜ、常設仲裁裁判所に訴える国々は急増しているのでしょうか。
 
その原因は、先ずは、国際司法裁判所ICJ)、否、国連(UN)が機能不全状態に陥っていることにあると考えることができます。国際司法裁判所は、紛争当事国の双方が合意しない限り、案件は受理・開廷されることはありません。このことから、敗訴となる可能性の高い国、すなわち、‘悪徳国家’は、提訴に応じるわけはなく、国際裁判所は、「あって無きが如く」ということになり、事実上、存在していないに等しいことになるのです。結果的に、裁判は開かれないことになるのですから。このことは、尖閣諸島竹島北方四島については、それぞれ、中華人民共和国、韓国、ロシアがICJでの解決を望むはずもなく、平和的解決が困難となっている現状によく示されております。
 
こうした機能不全は、国際司法裁判所の問題に留まりません。拒否権の存在によりまして、国連安全保障理事会も機能不全に陥っており、‘悪徳国家’、特に常任理事国の暴力主義や常任理事国の支援を受けている国々の暴力主義に対しまして、何ら、有効な手を打つことができないのです。安全保障理事会も、「あって無きが如く」ということになります。
 
このように、現在、国連が「あって無きが如く」の存在となっていることをめぐりましては、私には、計画性があるように、思えてならないのですが、国連を「あって無きが如」き存在とすることで、国際紛争の平和解決への道を塞ぎ、暴力主義国家に有利な状況をもたらすことに、仮に、計画性があるといたしましたならば、それは、まさに‘サタンのなせる技’と言うことができるでしょう。
 
 しかしながら、7月26日にも申しましたように、常設仲裁裁判所が存在していることは、国際法を順守する自由主義・平和主義国家にとりまして、救いとなっており、国際司法裁判所に、法の支配による正義(justice)の実現者、国際紛争の平和的解決者としての役割を期待できない、もしくは、国際司法裁判所を見限った多くの国々が、常設仲裁裁判所に提訴する理由となっていると考えることができるのです。
 
このような意味におきまして、真の‘幽霊屋敷’は、国際司法裁判所の方であるのかもしれません。しかも、その幽霊屋敷には、今なお、‘キョンシー’や‘ゾンビ’、否、‘サタン’が居座っているようにも見えるのです。
 
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(続く)