時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

貧困女子高生問題-虚偽はだめ

 先日、NHKが「ニュース7」において報じた貧困女子高生問題が、目下、ネット上において騒ぎとなっているようです。事の発端は、”貧困女子高生”として登場した女生徒の証言に疑問が寄せられたところにあります。

 ネットでの論争では、NHK&女子生徒を批判する側と、NHK&”ネット批判”を批判する側に分かれているようです。前者は、マスメディアによる”やらせ”を糾弾し、後者は、主としてネットによる弱者叩きとして捉えています。また、どちらともNHKに対しては批判的ですが、後者の批判は、撮影に際して女生徒への配慮が足りなかったというもののようです。

 この問題で重要なのは、NHKの目的は、子供の貧困問題の国民への提起にあったことです。日本の子供のうち、6人に一人が貧困状態にあるとするレポートもあり、当問題の解決への後押しとするつもりであったのでしょう。仮に、この数字が正確であれば、国民の誰もが、危機感を感じて貧困問題の解決には賛成するはずです。しかしながら、よく考えても見ますと、6人に1人が貧困であれば、クラスには、5人から6人の貧困家庭の生徒がおり、生徒会長を務めている女子生徒に出演を依頼しなくとも、簡単に貧困家庭の生徒を見つけることができたはずです。何故、敢えて虚偽の証言をする女子生徒を出演させたのか、その経緯の方が謎です(何らかの政治団体のコネクションでは?)。また、貧困の為に進学を諦めたと証言しているそうですが、勉学を志すのであれば、奨学金制度を利用できますし(この点は、片山議員の発言は間違ってはいないのでは…)、8月の段階で進学を諦めるのは早すぎます。

 NHK並びに出演した女子生徒は、虚偽の証言をしたことにより、むしろ、国民の間に子供の貧困問題に関する疑いを生じさせる結果となってしまったのではないでしょうか。”やらせ”によって貧困問題に対する国民の理解が得られなくなったとしますと、NHKも女子生徒も、真に貧困状態にある子供達に対して罪造りなことをしています。また、証言のみに依拠した慰安婦問題のように、子供の貧困問題そのものが怪しいともなりますと、国民のマスコミ不信も深まります。こうした諸点を考えますと、子供の貧困問題を提起するならば、一切の脚色や演出を排した、貧困家庭の実態をありのままに映した記録映像を収録して、国民に訴えるべきであったと思うのです。

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