時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

米国大統領選挙が示す今日の世界の危機

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。本日はアメリカ大統領選挙について書かせていただきます。
 
いよいよ明日、11月9日未明、米国大統領の選挙結果が判明いたします。今回の米国選挙ほど、ある意味で、大統領の選出制度の欠陥の問題のみならず、国家を形成している人々の‘国家認識’の違いの問題を、米国民のみならず、世界の人々に問いかけた選挙はないのではないでしょうか。
 
その理由は、民主党候補が提示する‘米国像’と共和党候補が提示する‘米国像’には、大きな違いがあるからです。民主党ヒラリー候補が、大統領に当選すれば、移民政策はさらに進められると予測されるのですが、移民国家と言われる米国における移民政策をめぐりましては、キリスト教国であるヨーロッパ各国からの移民をおもに対象とした過去の移民と、今日の移民との間には、メンタリティーや宗教、おもに企業との関係におきまして大きな違いがあります。この問題は、米国社会を崩壊へと導く可能性のある問題である、と言うことができます。
 
社会とは、宗教的倫理観、社会通念、一般教養・知識などを共有する人々によって形成されてくるものです。移民国家の米国が、曲がりなりにも、安定した社会を築いてきたのも、その移民の多くが、ヨーロッパの出身であり、宗教的倫理観、社会通念、一般教養・知識を同じくする人々であったからに、他なりません。
 
しかしながら、今日の移民には、メキシコからの不法に入国する移民のみならず、異文化であるイスラム教徒・アジア系の人々なども多く、宗教的倫理観、社会通念、一般教養・知識を同じくする人々であるどころか、自らの‘成功’のためには、人を騙すなど、ありとあらゆる悪をなすことを奨励する「孫子の兵法」を実践するような人々であったりするのです。
 
さらに、企業との関係におきましても、昨今の移民増加の理由が、低賃金労働者の確保にある点も重要です。昔の移民は、低賃金労働者ではなく、個々人それぞれが、企業との間に適正な雇用関係を結び、その能力や技能に適した賃金を受け取り、米国の一般社会・経済を支える存在となっていった、と言うことができます。しかしながら、今日の移民は、一般の米国人よりも低賃金であるがゆえに、企業によって雇用されるわけですので、移民層は、米国社会の一員となるのではなく、むしろ、白人層の雇用を奪う結果となって、既存の米国民との間に対立関係が生じてしまうのです。
 
 果たして、こうした問題を抱えたままに、移民政策を推し進めてゆきますと、どのような結果となると予測されるでしょうか。
 
 まず、文化的には、所謂「古き良きアメリカ」は消滅し、白人層を中心とした既存の米国民の多くは、失業することになります。そこで、失業者への失業手当は、誰が負担するのか、といった問題が、生じてまいりますが、移民は、もとより低賃金労働者ですので、大量の白人失業者の失業手当を負担することには、無理があります。では、低賃金移民労働者を雇うことで人件費を低くおさえ、利益を増大させていると考えられる企業は、どうであるのか、と言いますと、「パナマ文書」や「バハマ文書」の問題が示しますように、‘納税回避行動’を採る傾向にあります。すなわち、誰も、失業手当を負担できないことになってしまうのです。
 
さらに、この問題は、昨今の移民が、かつてのような米国社会における人々の調和と共存共栄を望む人々ではなく、弱肉強食の人々であることによって、拍車がかかることになります。低賃金労働者の増加、失業者の増加、失業手当などの社会福祉の低下は、国民の購買力を低下させることになり、いよいよ危機的状況に陥ってしまうのです。
 
このような危機に気付いている多くの人々が、共和党のトランプ候補を支持しているそうです。メディアによりますと、ヒラリー候補が優勢であると伝えられておりますが、仮に、ヒラリー候補が当選いたしましても、米国民は、論理的、かつ、長期的に将来を予測し、米国を衰退、崩壊へと向かわせる政策に対しましては、断固として異議を唱え、反対してゆくのではないでしょうか。
 
そして、このような想定は、米国のみならず、我が国も含めた世界の多くの国々が直面している危機でもあります。
 
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(続く)