時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

米国大統領選挙は移民推進政策の問題点を世界レベルで議論すべき時期に来ていることを示している

本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。今回の大統領選挙が、移民推進政策が是か非であるのかをめぐる争いでもあった点を踏まえますと、移民問題につきまして、人類は、一応の普遍的な答えを共通認識として持つ必要がある、と言うことができるかもしれません。
 
今回の選挙をめぐる混迷は、国民間における目指すべき国家像の相違による国家分断・分裂の危機の恐ろしさも、示すことになった、と言うことができます。この分断は、続くことになるのか、否か、それは、その争点となっている移民推進政策が是であるのか、非であるのか、を論理的にはっきりさせることで、沈静化できる可能性があると言うことができます。
 
すなわち、ここで、移民推進派と移民反対派の目指しているそれぞれの国家像が、政治・経済も含めた世界の安定的発展と調和、治安の維持をも含む社会的秩序の維持に繋がる国家であるのか、否か、を普遍的問題として、議論すべきではないか、と思うのです。米国民主党政権EU首脳部が、そして、マスメディアが、移民推進派であるために、移民問題を議論することは、これまでタブー視されてきた感があります。しかしながら、人類の将来は、どうあるべきであるのか、を考える場合、やはり、この問題は、避けては通れないのではないでしょうか。
 
11月8日附け本ブログにて、経済面を中心に、移民の増加によってもたらされる危機について述べました。さらに、昨今の企業活動との関連で、企業誘致と同時に、その企業に雇用された外国人労働者がある纏まった単位で流入する結果、その地域に、言語、道徳観、社会通念、一般教養の異なる‘異文化の世界’が成立してしまう、という問題点を、今日は、指摘しておきたいと思います。
 
外国人労働者の多くは、故国の経済状態が悪いことから、故国へは帰りたがらないものです。仮に、本人やその子孫が、国籍を取得した場合、その人数は、ある纏まった単位ですので、移民受け入れ国の内部に、政治的権利を有する‘リトル移民送り出し国’が出現し、将来的には、その地域における人口比の逆転もあり得てしまうことになるのです。英国では、居住民の80%が、アジア系などの住民となってしまった都市もあると言います。
 
かつての海外進出企業は、現地の人々を雇用することで、その国の経済活動を発展させる役割をも担っておりました。しかしながら、昨今の企業活動は、現地の経済のみならず、政治にとりましても、移民受け入れ国側にあまりにも大きな問題をもたらしているのです。この点におきまして、「経済特区」をつくりますと、将来的に、‘リトル移民送り出し国’が成立してしまう危険は、さらに高まることになります。
 
このように考えますと、英国のEU離脱、米国大統領選挙の結果、ヨーロッパにおける反移民政策を掲げる政党の躍進を、決することとなった有権者は、理に適った判断をしている、と言えるのです。

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(続く)