時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

皇室問題と戦国時代の危機を考える

 本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。譲位問題を含め、現在の‘皇室’をめぐりましては、あまりに多くの疑惑や不審点があり、こうした疑惑や不審点に検証を加えずにおきますと、天皇への国家権力の集中をめざす悪しき勢力、すなわち、日本国民から国民主権民族自決権とを奪おうとしている勢力が、歩を進めてしまうことになりかねません。そこで、本日の記事では、皇統断絶説の問題について扱ってまいります。
 
10月1日付本ブログにて、「古代の‘天皇’と、現在の‘天皇’とは別物と考えるべきであるのか、否か」という問題が、現在の‘皇室’には横たわっていることを指摘させていただきました。この問題は、二つの点から整理することができます。ひとつは、①万世一系とされている‘天皇’の血統断絶の問題、もう一つは、②天皇の役割と機能の変更問題、ということになります。
 
現在の‘皇室’をめぐる議論を見ますと、何故にか、①については不問に付されているようです。しかしながら、真に深刻なのは、①の問題です。‘天皇’の血統とは、天照大神スサノオノミコトの誓約(うけい)によって生じ、地上に降臨した神様の子孫であり、この天孫降臨の神話こそ、天皇が”現人神”として人々の崇敬を集めた理由でもあります。子子孫孫、皇祖皇霊を継承しているからこそ、天皇位の世襲制が正当化されているのです。そこで、血統の断絶があったと考えられる時点を、史料や資料にあたって調べてみますと、およそ以下の3つの時点には、ある程度の蓋然性があるようです。
 
1)南北朝時代北朝天皇は、足利義満の子であるとする説によるもので、南朝後醍醐天皇ラストエンペラーである。すなわち、15世紀の南北朝時代に古来の天皇の血筋は断絶している。
2)戦国時代、イエズス会による計略によって天皇の血筋が断絶せられている。正親町天皇ラストエンペラーである。すなわち、16世紀の戦国時代に古来の天皇の血筋は断絶している。
3)幕末に、薩長連合によって、天皇の血筋が断絶せられ、明治天皇が立てられた。孝明天皇ラストエンペラーである。すなわち、19世紀後半に古代の天皇の血筋は断絶している。
 
このように3つの時点が考えられ、全て、あるいは、幾つかが事実であれば、皇統は、何度か入れ替わっていることとなります。1)と3)の説は、既に知られていますが、現在の‘皇室’問題との関連で、特に着目したいのは、戦国時代にも古来の天皇の血筋が断絶の危機にあった可能性です。その理由は、大航海時代を迎え、世界各地で植民地化が進行した時代でもあり、植民地化の常套手法を考慮すると、天皇の血統の断絶もあり得ないことではなかったからです。
 
日本国にも、ポルトガル船の種子島への漂着を機会として、フランシスコ・ザビエルをはじめ、多くのイエズス会士が来日しています。このことは、日本国も植民地化される可能性があったことを意味しております。では、どのような手法で植民地化が計画されていたのか、この点につきましては、次回、扱います。

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(続く)